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刻み込まれたのはアニタ・ムイの不在

 …というのは、『キネマ旬報』9月上旬号の伊藤卓氏の記事のタイトルである。このキネマ旬報、巻頭特集が「十面埋伏(Lovers)」なのである。伊藤卓氏、浦川とめ氏など錚々たる書き手、チャン・イーモウ監督のインタビューは松岡環印度映画大姐だ。思わず買い、その足で観に行った。
 見ている間中頭にあったのは「梅姐がいたらどうなっていたのだろうか」ということ。伊藤氏によると、「アニタ・ムイの病状の悪化を受けて、チャン・イーモウは彼女と同じ背格好のスタンドインを用いて撮影を進め、彼女が数日間撮影に参加して顔の映り込むカットを集中的に撮れば済む段取りをつけていた」とのこと。きっと違った話になっていたんだろうなあ。さらに、伊藤氏は「(代役を呼び寄せることは可能であったろうに)設定の一部変更と物語の省略によって自作が傷を負うことを敢えて選び、そのことをアニタ・ムイの不在を映画史に刻み込んだ」と書いている。エンドクレジットの一番最初の「アニタ・ムイに捧ぐ」を見て、思わずぶわっと涙が出た(映画自体では泣けなかったのだが)。

 先回香港へ行ったのが今年の1月上旬で、ちょうどホテルにチェックインしたときに、アニタ・ムイの追悼番組をやっていた。フィルムを流しながら豪華ゲストが入れ替わり立ち替わり故人を追悼するという番組で、荷ほどきも食事もせずに見た(写真はその画面。ちなみに共演はレスリー)。

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 その後、遊びに行った知り合いの家が北角で、葬儀は帰国とぶつかって出られなかったのだが、葬儀場まで行って外で手を合わせてきた。葬儀の前日だったのだが入り口は花と人でいっぱいだった。
 追悼番組は、梅姐がコンサートの最後に「夕陽の歌」を歌って、ステージ奥の階段を上ってドアを開けて去り際に元気よく「バイバイ!」と手を振ったシーンで終わったのだが、その場面が繰り返し頭に浮かんでいる。

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