「2046」 をめぐって
初めて香港へ行ったのは、「阿飛正傳(欲望の翼)」が香港で公開されたクリスマスだった。香港映画友だちと行ったので、まず行ったのは映画館。何もわからないから新聞で誰が出るかを見て決めた。顔ぶれの豪華さで言ったらなんといってもこれだった。ところが目が悪くて字幕が読めず、話が全くわからない。「なんでレスリーは撃たれたの?!」「あの最後の人は誰?」(今考えればトニーだわな)。謎が解けたのは日本で公開されてから。余談だが、その翌日行った「賭侠」では字幕が読めなくてもとてもよくわかったので、世の中には台詞に依存する映画としない映画があると知った。
その後、雑誌で「重慶森林(恋する惑星)」を知り、見たい見たいと思っていたら、しばらくして公開された。今でも中環の街市のあたりを通ると「トニーがご飯を食べていたのはこのへんかな」と思う。考えてみると、王家衛の映画は全部公開されているんだから、日本っていい国だ。
「旺角カルメン(えーと「いますぐ抱きしめたい」だっけ)」や「ブエノスアイレス」はなんだか見ているのが辛い。「阿飛正傳」は南のまったりした空気が好きだ。「重慶森林」が王家衛では一番繰り返して見ているかも。で、昨日、WOWOW でやっていた「花様年華」を見て(考えてみると、これはちゃんと見ていなかったのだ)、「あ、これ好きだ。一番好きかも」と思った。緑っぽいような黄色っぽいような光の中でまったり流れる時間がいい。ちゃんと「2046」も出てくるし。WOWOWさんたら、トニー来日に合わせたのか?
明けて本日、ワイドショーなどで「2046」が取り上げられているが、あちらこちらで述べられているように、報道は偏向している。そのことは、まあどうでもいいといえばいいのだが、なんでそうなるのか、正直なところよくわからない。外国の映画でがんばったのが偉いのなら、香港のスタント界でがんばっている谷垣健二くんのほうが偉いだろうし、外国の監督から声がかかったのが偉いのなら他にもそういう人はいるだろうし。日本映画でも香港の俳優は使っているわけだし。ひとつ外国の映画に出たからって、これからばんばん海外から声がかかるとは限らないし。いい俳優は誰か、誰がいい顔をしているかは、まあ、見れば歴然としているんだけど。
自国の俳優が海外の映画に出ても喜びはするがおおむね普通にしている、あるいは、自国のことばかり言い立てるのではなく、他のキャスト・スタッフにも敬意を払う、というのが格好いいというか大人の態度だと私は思う。
それにしても、日本の皆さんに、トニー・レオンやマギー・チャンやチャン・チュンのことをもっとちゃんと見て欲しいものだなあ。「阿飛正傳」や「重慶森林」や「花様年華」をちゃんと見てくれよ。作られやすい話題じゃなくて、映画をちゃんと見てくれよ、というようなことを2046 official site(音が出ます)を見ながら、つらつら考えたのだった(やっぱり、どうでもよくないか)。
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