「霍元甲」
すでに広く知られている主題歌事件(元はジェイ・チョウが歌っていた主題歌が日本のグループに差し替えられた)もあり、予告も見たし(予告はジェイの歌がかかっていたし)見なくてもいいかな、と思ったのだが、リンチェイが「言いたいことは言い切った」と言っているので、やっぱり見ておこう、と思って観に行った。
行ってよかった。いい映画だ。
ストーリーはシンプルかつストレートで、ひねりというものが全くないのだが、ある意味、功夫映画の真髄をついていると思う。
功夫映画は、基本的に「誇りを取り戻す映画」だと思うのだ。
「少林足球(少林サッカー)」も「功夫(カンフー・ハッスル)」もまさにそういう映画だし「酔拳」もそうだ。同じくリンチェイの黄飛鴻シリーズは、「霍元甲」同様に清朝末期の中国人が中国人の誇りを取り戻していく映画だろう。
思いっきり増長していく前半、おいおいと思っていたら絵に描いたようにどん底に突き落とされ、「桃源郷」みたいな場所で復活(確認しそびれたのだが、あのロケ地はどこなんだろう?雲南省みたいな感じだけど)、中国人としての誇りを取り戻すために闘う後半という展開。お母さんの台詞も、月慈のお婆ちゃんの言葉も、中村獅童演じる田中安野(なんでこういう名前なんだ?色物でなくてよかったけど)の言葉も、とてもストレートでメッセージ丸出しなんだけど、どれもこれも真っ直ぐにテーマに結びついていて、いっそ気持ちがいい。
リンチェイの功夫も「円熟」の一言に尽きる。スクリーンをうっとりしながら一緒に拍手して観た。もっと見たい。
「桃源郷」パートの最後でリンチェイが演舞する姿ですでに泣き、親友(まさに「真の友」)ジンスンが上海に来るところ、もちろん最後も大泣き。執事の来福もよかったなあ。
実は、この映画は「お茶映画」でもあって、子供の頃の霍元甲はお父さん(「マトリックス」のセラフってこんな顔だったのか)にお茶を持って行くし、お母さんもお茶飲んでるし、田中安野もお茶を淹れて、しかも霍元甲がお茶について語っているし(「お茶に優劣はない」!)、試合場にもお茶があるし(…)。ジンスンとお茶で乾杯するシーンでは、泣きながら一緒にお茶(サーモマグに入れた しゃおしゃんの青プー)を飲んだ。
帰ったら、当然蓋碗でお茶だ。
なので、主題歌を差し替えたその神経が理解できない。「ロード・オブ・ザ・リング」などを見るまでもなく、主題歌は映画の一部でしょう。だからこそ、最後にクレジットもされるんでしょう。「ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還」のラストが「Into the West」じゃなくて、日本人歌手に差し替えられたとしたら?
日本人にアピールするなら中村獅童で十分だし、せめて音楽の梅林茂さんの曲のほうがまだまし。それを、縁もゆかりもない日本人グループの曲に差し替えるというのは、映画そのものの尊厳を損なうことだし、特に、この映画については、主題を考えたら、映画全体を否定している所業と言っても過言ではない。
CDを持ち込んで「セルフ・エンディング」にしたので、帰りに頭を巡っていたのは、幸せにもジェイの「霍霍霍霍霍霍霍霍」だったのだけれどね。
今日アマゾンからDVDの案内が来ていたのだが、なぜかDVDのタイトルは「SPIRIT」じゃなくて「フォ・ユァンジア」とカタカナだった。「初回限定」とあったのだが、内容についても主題歌についても情報は全くなし。(追記:4月発売とのことなので、夏に出るという「霍元甲(SPIRIT)」のDVDとは別ものと思われる)
せめてDVDでは主題歌をオリジナル通りに収録すべきであるし、スクリーンでも再上映すべきだろう。
映画の精神を尊重するのなら。
「国の恥」と言われたくないなら。
(追記:DVDは主題歌がジェイになったとのこと。詳しくはこちらを)
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コメント
きたきつねさん、はじめまして。古い記事へのコメントですいません。
すでにご存じかもしれませんが、ジェット・リーの新作映画「海洋天堂」が、中国・香港などで公開されています。アクション作品ではなく、ヒューマンドラマです。
主題歌はジェイ・チョウが歌っています。
この「海洋天堂」の日本公開運動をやっているそうです。
「ジェット・リーの『海洋天堂』を日本で観たい!」
http://oceanheaven.amaterasuan.com/
ネット署名の代わりに、BBSでメッセージを募っています。もしよろしければご協力お願いします。
投稿: あーる | 2010.07.21 08:21
あーるさん
ようこそいらっしゃいませ。
コメントはいつでも大歓迎です。
お返事が遅くなり、すみません。
情報ありがとうございます。
「海洋天堂」日本のスクリーンで見たいですね。
後ほど参加いたします。
投稿: きたきつね | 2010.07.23 13:17