「失われた龍の系譜」
ベネチア映画祭でジャッキー・チェンが「体を痛めつける役から離れ、違う役を演じたいと考えていた。アクション俳優の活動期間は短い。格闘だけでなく、他の役割も演じた役者として記憶されたい」と語った、というニュース。
ジャッキー・チェン、アクション引退?=「デニーロ目指す」と抱負(時事通信)
ジャッキー、52歳。「龍兄虎弟」で頭蓋骨骨折したのが20年前。今回の映画「Rob—B—Hood」でも、スタントマンの蹴りを胸に受け病院に担ぎ込まれたという。たしかに、52歳でこれは、やりすぎといってよい。
このニュースと関係があるのかどうか、自分でもわからないのだが、「失われた龍の系譜」をDVDで観た。
ジャッキーの両親の生涯を描いた映画なのだが、映画の中でも言われていたように、これは家族の物語であり、中国歴史の物語である。お父さんがお母さんの病気を契機に話し始めるまで、息子のジャッキーも知らなかった過去が語られていく。
日本軍の空襲に遭い最初の夫をなくしたジャッキーのお母さん。紆余曲折(兵士やら国民党の極秘任務やら密輸やら、波瀾万丈といっていいと思う)を経て上海へやってきたお父さん。上海での出会いはお父さんがお母さんを逮捕したことで、お母さんはギャンブラーでもあったらしい。共産党の勝利により国民党のお父さんは本土に居られなくなり名前を変えて香港へ逃れ、お母さんも香港へ密航。両親は、アメリカ大使館で働くようになり、ジャッキーが生まれ、8歳で武芸学校に入ったジャッキーを残し、オーストラリアへ移民。18歳で卒業したジャッキーは一時オーストラリアへ渡り働いていたこともあったという(知らなかったよ)。
その後、ジャッキーは香港へ戻り、ご存じのとおり大スターになったわけだが、実は、大陸には、お父さんに2人の息子、お母さんに2人の娘が残されていて、文化大革命で息子は行方不明になっていたり。
監督は「宋家の三姉妹」「秋天的童話(誰かがあなたを愛してる)」のメイベル・チャン、製作は「七小福」「玻璃の城」のアレックス・ロウ。メイベル・チャンはジャッキーのご指名だったらしいが、これほどうってつけの人材はいないだろう。ジャッキーの2人の異母兄・2人の異父姉やその他の人々へのインタビューも交えながら、日本軍の中国侵攻、中国内戦、文化大革命で何があったのかが語られる。
印象に残ったのは、空襲や内戦や革命の中で起こったことを淡々と語るジャッキーのお兄さんとお姉さん。淡々と語る裏にはいろいろなことがあったんだろうと思う。文化大革命のときには「真面目に目立たないようにしていたから大丈夫」と異口同音。お姉さんは、オーストラリアのお父さんから手紙が来ただけで三角帽子をかぶらされたらしいのだけれど。
アレックス・ロウが撮った「七小福」が挿入されていたのも嬉しかった。この映画は同時にジャッキーの物語でもある。
最後の方で、お父さんは大陸に渡り、行方不明になっていた息子と再会し、もとの名前を取り戻して再び「房」家の家長となる。系図も整え、ジャッキーも「房仕龍」として系譜に書き加えられる。ジャッキーの息子ジェシー・チャンが「房」姓なのは、このためだったのね。
映画の中のジャッキーが両親に対してほんとにいい息子で、中国での「家族」や「一族」がどんなものか、かいま見た気がする。香港映画にあまり興味がなくても、「家族」や「歴史」に興味がある人には面白いと思う。
で、最初の話に戻るのだが、ここまで頑張ったのだから、ジャッキーはアクションは引退してもいいと思うのよ。「格闘ばかりの俳優」じゃないだろうし、香港映画への貢献はそれはそれは大きいのだし。ただ、ロバート・デ・ニーロというには、いい人すぎるというか、しょっているものが違うような気がするなあ。
あと、後継がルイス・クーというのは、どうかな?前にニコラスにも同じようなこと言っていたよね?
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コメント
こんにちは。私もこれ観ました。感想を書こうとしつつ、寝かせっぱなしで今にいたるのですが、印象に残っているのは同じく、全員がそれぞれ大変な人生を送っているのに淡々としているところ。淡々と語れるようになるまで、映し出されない長い時間があったんだなあと思いました。ジャッキーは本当にいい息子ですよね。お母さんが幸せそうでした。
あと、デ・ニーロは違うかも...。
投稿: rivarisaia | 2006.09.10 00:25
感想を書くのに、ちょっと考えてしまう
重い映画ですよね。
初めのほうは、日本人として「うーむ」と思いましたし。
香港のお年寄りは大なり小なり背負っているものが
あるのでしょう。心して行かねば。
ジャッキー、いい人なんだけれど、
「役に溶け込んでジャッキーであることを意識させない」
のは難しいと思うんですよねえ…。
投稿: きたきつね | 2006.09.10 09:00
この映画観てみたいですね。
房祖名がなぜ「房」姓なのか,「お祖父さんの姓が『房』だったため」というのは読んだことがあるのだけど,そんないきさつがあったとは知りませんでした。
>> 後継がルイス・クー
これは微妙だ・・・(爆)
投稿: an-an | 2006.09.10 12:02
後継者は、ニコの方が…というか、
ジャッキーの替わりはいないだろうと思うのですが。
DVD、観ます?
あとでDMしますね。
投稿: きたきつね | 2006.09.11 07:26
>>ジャッキーの替わりはいないだろう
同意!
ですが,成龍のアクション引退後を想像すると
とてつもなく寂しい(泣)
困りましたね・・・
(追伸)DVD是非是非是非!m(_ _)m
投稿: an-an | 2006.09.11 14:40
勿論ジャッキーの代わりはいないし。。。
デ・ニーロのようには なれないと思うし。。。
古天樂はやっぱり無理だと思うし。。。
???がいっぱいのジャッキーのコメントでした
確かに50歳過ぎると何かと辛いですから(実感)
無理は言えませんが。。。
でもやり方は色々あると思うのです
もう危険なところはスタントに任せてしまうとか
これからもジャッキーらしい映画も撮って欲しいです
ジャッキーはジャッキーで 他の誰にもなれないし
誰もジャッキーになれないのですから
ひこが後継者って言ってた事もあったなぁ(遠い目)
投稿: usako | 2006.09.11 18:37
an-anさん
たしかに、ジャッキー引退後は寂しいですなあ。
DVDの件、了解です。DMします。
usako さん
たしかに、危ないところはスタントにまかせる手もありですね。
どうしても、「ジャッキーならでは」の役になってしまうと思いますが。
極悪人とか…難しいですよね。
それにしても、ひこにもそんなことを言っていたとは。
リップサービスで言いまくっているのでは。いい人だけに。
投稿: きたきつね | 2006.09.11 19:25