アーノンクールきたる
ニコラウス・アーノンクールの名前を初めて見たのは、創刊からそれほど経っていなかった『LaLa』だった。当時の『LaLa』は、毎号毎号、萩尾望都先生、山岸涼子先生、大島弓子先生(初心にかえって「先生」をつけてみた)をはじめとする綺羅星のようなマンガが読めた夢のような雑誌だった。そこで森川久美先生がエッセイのようなコーナーで「アーノンクールのバッハは違う」と書いていらしたのだ。
そうか、と思って、「管弦楽組曲第3番(たしかカップリングは第2番だったと思う)」の「LP」を買い、以来ずーっと聴いている。CDはものすごく探した。最近はブランデンブルグ協奏曲やヴァイオリン協奏曲が定番。
そのアーノンクールがウィーン・コンツェルト・ムジクスを率いて札幌にやってきたのだった。まさか、この耳で生で聴ける日が来るとは思っていなかった。
曲目は、オール・バッハ・プログラムで、「管弦楽組曲第1番」、「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ニ短調」(「2台のチェンバロのための協奏曲」と同じ曲)、「カンタータ組曲」(歌は入らず、チェンバロがメイン)、「管弦楽組曲第3番」、アンコールが「管弦楽組曲第4番」からガヴォット(たぶん)。
ウィーン・コンツェルト・ムジクスは古楽アンサンブルで、1st(バロック?)ヴァイオリン6人、2nd(バロック?)ヴァイオリン6人、(バロック?)ヴィオラ4人、チェンバロ1人、(バロック?)オーボエ2人(後ろから見ていたので自信なし、1人はバセットクラリネットかも。でも1人は女性でクラリネットは男性しかいないので、やっぱりオーボエかなあ)、(バロック?)バスーン1人、バロック・チェロ(ヴィオラ・ダ・ガンバ?)2〜3人、ベース2人、ナチュラル・トランペット3人、ティンパニ1人。やたら「?」がついているのは、プログラムの楽器名が英語の名前でモダン楽器と一緒なので、いまひとつ自信がないため。しかし、管楽器、チェロは明らかにモダン楽器ではなかった。ナチュラル・トランペットは、細い管がくるんと巻いているだけ。
ステージ横の、チェロの後ろあたりの指揮者がよく見える席だったので、楽器を弾いている様子、アーノンクール先生の指揮ぶりがとってもよく見えた。KITARA大ホールのRAブロック、好きだ。
アーノンクール先生は、やっぱりAllegroがとっても楽しそうで、「管弦楽組曲第3番」の序曲もとっても楽しそうで、「管弦楽組曲第1番」の「ガヴォット」で「もっともっと盛り上げて〜」という動作が楽しそうで、ときどき空手チョップのような動きが入るのがツボで。ヴァイオリンとオーボエ同時に指示を出すときは「死刑!」のようでもあった。
そして何より、音が、ああ、音が。ずっとずっと聴いてきたドライブ感あふるる響きが足下から上がってきて、まわりいっぱいに響いているのがとてもとても幸せで。「管弦楽組曲第3番」は泣きました。あの気持ちは筆舌に尽くしがたい。
観客はそりゃあもう大拍手だったのだが、アーノンクール先生、アンコールもすべて終わって、みんなが帰り支度を初め、そろそろ出ようか、という頃になって、再び一人でからっぽのステージに登場。当然、残ったお客さんは大喜びで大拍手、ナチュラルにスタンディング・オーベーション。
そのときのお姿と、ビオラ・ダ・ガンバ方向(すなわちこちら)への「チョップ!」が心の1枚である。
アーノンクール先生、悪天候にもかかわらず、札幌まで来てくださってありがとうございます。再び生で聴ける日が来るかどうかはわかりませんが、これからも聴いていきますので(CD買ったし)、元気で長生きしてくださいね。
思わず撮ってしまった幕間。
チェンバロ調律中。
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コメント
きたきつねさんの記事を読んで,一度聴きたいなぁと
思っていたところ,昨夜NHK教育で放送が!
モーツァルト39~41番@サントリーホールでしたが,
苦手科目(爆)のモーツァルトにもかかわらず珍しく
ピッタリ来たので思わず記事にしちゃいました♪
投稿: an-an | 2006.11.27 16:01
コメント&トラバ、ありがとうございます。
教育テレビ、ばっちり録画しました。
金曜日にはBSで「レクイエム」もやったのです。
ウィーン・フィルより、コンツェント・ムジクスの方がよいと思います。
たしか1000円で買えるのがあるので、是非聴いてみてくださいな。
投稿: きたきつね | 2006.11.27 18:30