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「無間道」にオリジナル脚本賞を!

(注:これはアカデミー賞脚色賞発表直後に書きました)
 こんな時間に更新することはめったにないのだけれど。
 平静に仕事が続けられないので。

 「脚色」を広辞苑で引くと、「脚本や芝居狂言の仕組み。特に、小説などに手を加え、舞台装置・せりふ・ト書きなどに記して、演劇または映画に適するようにすること」とある。アカデミー賞の歴代の脚色賞 (Wikipedia)を見ると、小説や舞台から脚色されたものが多いように思う。Wikipediaにも「小説や舞台などから起こされた脚本におくられる」と書いてあるし。
 今年のアカデミー賞は「ディパーテッド」に脚色賞を与えた。
 おまけに、テレビ中継で「日本の原作(Japanese Film)」と間違えた。「間違えやがった」と言いたい。誰が間違ったのかは頭に血が上ってしまって覚えていないので、再放送で確認したい。香港だよ香港!受賞者も香港のことやアラン・マックのことは言っていなかったと思う(訂正:ちゃんと感謝の言葉を述べていました。まあ当たり前だ。脚本家氏よすまなかった)。作品紹介に「Based on Infernal affairs」とあったけどね、「Infernal affairs」が香港の「無間道(邦題はインファナル・アフェア)」で、それがどんな映画か知っている人は、アメリカではそんなに多くはないだろう。
 小説の脚本化に賞が与えられるのはわかる。舞台から映画にするのも、いろいろと変えなければならないことがあるだろうから、わからなくもない。しかし、映画のリメイクに脚色賞を与えてもいいものなのか?それって「焼き直し」って言わないか?それで脚色賞を与えるとすれば、元の映画に比べて抜群にいいということになる。審査員は「無間道」を見たのか?それで、脚色賞を与えるに値すると判断したのか?「ディパーテッド」は「無間道」を完膚無きまでに換骨奪胎してオリジナル映画になっているのか?
 実は「ディパーテッド」はまだ観ていないので、フェアな判断はできないのだが、もとの「無間道」の脚本になくて「ディパーテッド」の脚本にある優れた部分って何なのだ?そして、これも先入観で言うのだが、審査員が、「無間道」と見比べて脚色賞を与えたとはあまり思えない。仮に全員が観ていたとしても、元祖「無間道」より「ディパーテッド」の脚本が抜群に優れていると判断したという基準が理解できない。
 だいたい、「日本の原作」と間違えるということは、「無間道」が知られていないということだろう。
 「無間道」が知られていないということが、知られていなくてリメイクが高い評価を受けたということが、とてもとてもとてもとても口惜しい。アメリカで「無間道」を「ディバーテッド」と大々的に併映公開してガチンコで勝負させてくれないものか。 
 まさか、アカデミー賞で悔し泣きするとは思わなかった。「ロード・オブ・ザ・リング」の11部門制覇と發仔がプレゼンターのときには嬉しさのあまり泣いたものだが。

 (ちょっと頭を冷やしてから追記)
 これは、たとえば「七人の侍」をさしおいて「荒野の七人」が脚色賞を取ったら、とか、アメリカ版「南極物語」や「 Shall we dance?」が脚色賞を取ったら、と同じ問題である。シチュエーションを違う文化におきかえた場合は、たしかに脚色する部分があるかもしれず、アメリカ版「ディパーテッド」に香港版「無間道」にないアメリカ社会をあぶり出している部分があるとか、オリジナルの欠点を払拭してより面白い映画になっているというのなら、その部分が評価されたということはあるかもしれない。
 しかし、オリジナル脚本によるプロットやエピソードや台詞やト書きがリメイクのものとして評価されている可能性があることは(分離して評価することは難しいのだろうけれども)、特にそれがオリジナルが知られていないために起こっている可能性があるということは、やはり、とてもとても悔しいのだ。
 「無間道」が貶められたということではないのだけれど。でも、ないがしろにされた気持ちはするのよね。
 脚色賞の評価は、オリジナルをちゃんと知った上で行われているのだろうか?他の映画のリメイクが脚色賞を受賞するのは「あり」なのだろうか?ハリウッドはハリウッド映画のリメイクにも脚色賞を与えるのか?

(さらに追記)
 結局、「ディパーテッド」は監督賞・作品賞も受賞した。
 監督賞のプレゼンターがスピルバーグ・ルーカス・コッポラというすごい面子で、ルーカスが「いや、僕は取ってないから」と言うようなスリー・アミーゴス状態だったのだが、絵面的にこれはスコセッシで出来レースだったのかと思ったり。結局、これはアメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための賞であってグローバルな見識を求めるのが間違いだったのだなあ、と思ったり。
 スコセッシはアンドリュー・ラウとアラン・マックに感謝の言葉を述べたようで、香港でも報道されていた。
 香港での新聞報道(google news)(Yahoo!香港の検索結果はこちら)の見出しを見た感じでは、香港映画には励みになったところもあるようで、もしそうなのだとしたら、それはそれでよかったのだろうと思う。
 アカデミー賞の見識に納得はしないが。

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コメント

我同意~!!!!!
(鼻息荒すぎてこれ以上書けません。とりあえず同意の印だけでも。)

投稿: an-an | 2007.02.27 15:50

私も~!!
いつも心優しく穏やかな(と、私は思ってる…)きたきつねさんが怒ってる!

投稿: hanatya | 2007.02.27 17:35

同意、ありがとうございます!

an-anさん
鼻息、荒くなっちゃいますよねえ。
「Japanese Film」で確実に血圧が上がりました。私。

hanatyaさん
心優しくありませんって…(ぽりぽり)。
それにしても、
アカデミー賞ってお友達同士の内輪賞なんだ、と思いつつ、
アカデミー賞ごときで動揺する自分に驚きです。

投稿: きたきつね | 2007.02.27 18:35

こんにちは。鋭いところを突いていると思います。
脚色賞の評価って、オリジナルを観ている人とそうでない人では
差が出ると思うのですが、そこはどうしているのか疑問です。

ハリウッド映画のリメイクにも賞を与えるのか、という点は今後の
課題のような気がしますね...。
香港映画には励みなったのであれば、救いなんですけどね....。

投稿: rivarisaia | 2007.02.27 19:09

rivarisaiaさん
たぶんオリジナルは知らないと思うのですよねえ。
そちらにも書いたのですが、
ハリウッドは今後どうなることやら。
香港映画の励みになったのなら、それだけが救いです。

投稿: きたきつね | 2007.02.27 23:33

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