「墨攻」
最終日の最終回に仕事をうち捨てて見に行く。
原作が酒見賢一で、それが日本でマンガになって、さらにジェイコブ・チャンが映画化した、ぐらいの予備知識しかなかった。ストーリーで知っているのは、アンディ・ラウが墨者で、梁の危機を救いに来るということだけ。梁が救われて終わり、というわけではないだろうと思ってはいたけれど。やっぱり。
アンディ、「愛の博士」(@もにかるさん)の面目躍如であります。ジェイコブ・チャンも、さすが「籠民」「流星語」の監督だけある。監督は、インタビューを読んだことがあるのだが、とてもいい人らしい。
たぶん、これは「戦いはしょうもない」という映画なのだと思う。完全なる善=正解はないという映画かもしれず、梁を勝利に導きながらも、これが最善なのかどうか悩むアンディが人間くさい。途中で、実は「女、じゃま!」と思ったのだが、正解はないのだということを示すためのエピソードだったんだろうなあ、きっと。「因果はあるのだろうか」と語るシーンでは「マッスル・モンク(すごく変な映画だが嫌いではない)」を思い出した。
しかし、しょうがない人間はあくまでしょうがない。梁王(王志文が名演)はヘタレで、しかし暴君というのはこんなもんなんだろうなあと妙に納得。その側近である司徒(午馬!)は奸臣なんだろうなあ。本人に悪気はないんだろうけど。余談だが、パンフレットによると、「馬で八つ裂き」の中国語「五馬分屍」は「午馬のファン」の発音にとても近く、午馬は喜んで連発していたらしい。
しかし、一方で高潔な士もいるので、アン・ソンギがひたすら格好良く、久々に見たニッキー・ウーが大人になっていてびっくりしたのであった。改心組のあの奴隷はどこから来たのだろう?アフリカ?蛭子さん似のヘタレな農民もいい味を出していた。人間は右往左往するものなのだな。
1回しか見られなかったが、たぶん、この映画は1回目より2回目に見たほうが評価が上がるような気がする。
筋と関係ないところでは、城攻めで、どうしても「ロード・オブ・ザ・リング」三部作を連想してしまった。城攻めの基本って決まっているのかしら。セットはよく出来ていると思うのだが、梁城の前のモニュメントが東南アジア風というかポリネシア風というか、どうにも古代中国の意匠に見えず、初めは時代がわからなかった。せっかく酒の器なんかはリアルなんだから、もっと古代中国の青銅器!という感じにすればよかったのになあ。
あと、音楽がとてもよかった。川井憲二さんには、いつか必ずや香港で金像奨をとってほしいと願う。
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