« イリス弦楽四重奏団コンサートのお知らせ | トップページ | Inn on the Park »

「ROME」は主役が愉しい

 wowowで放映中の 「ROME」は、昨日で第1シーズン分が終了。早くもカエサルが暗殺されてしまった。再来週から第2シーズンである。
 「ROME」は史実が下敷きであるので、登場するのはほとんどが実在の人物だと思われるのだが、さすがに話が回しにくいのか、架空の人物が主役となっている。

20070818rome1
 主役その1。ルキウス・ヴォレヌス。
 元第13軍団第1歩兵隊首席百人隊長(すごい)。
 軍人としては大変に優秀で、それはそれは強いのだが、生真面目で不器用。共和制を支持しカエサルには組みできないと、ルビコン川を渡った後軍を辞めたものの、商売には向かず軍に復帰。除隊後は支持していなかったはずのカエサルの引き立てで政務官となるのだが、政治家にも向いていない。どう考えても軍人しかできる仕事はなさそう。政治家になってからの白いトーガはむちゃくちゃ似合うのだが、なんたってかっこいいのは、第1話冒頭のガリア戦で、軍団の指揮をとっているところ。
 なんだかもう、見るからに幸薄い感じで、幸せになってほしいんだけど、無理だろうなあ。

20070818rome2 
 主人公その2。ティトウス・プッロ。
 元第13軍団軍団兵。規律違反で営倉に放り込まれていたところをヴォレヌスに拾われ、任務先で盗まれた金の鷲と誘拐されたオクタヴィウスを発見し、一躍出世。実はアントニウス襲撃のきっかけを作りルビコン渡河の原因となるわ、ポンペイウスの持ち出した国庫の金は見つけるわ、オクタヴィウスの家庭教師はやるわ、クレオパトラとカエサルの子供の実の父親だわ、逃亡したポンペイウスをヴォレヌスと共に見つけるわ、事件の陰に必ずいる。
 腕っ節が強く、粗暴で馬鹿で女好きではあるのだが、気はよく、ヴォレヌスを慕っている。しかし、庭先で人を殺してしまい居候先のヴォレヌス家から叩き出されて大変である。
 しかし、幸薄いヴォレヌスに比べて、超幸運児。幸せに生きるとはこういうことかと思う。

 最初は、架空の人物なので、どうかなあと思ったのだが、この2人がいいのね。初めの方で、任務の旅をしながら、女の扱いをプッロに質問しまくるヴォレヌスとか。薄幸な堅物とラッキーな馬鹿の取り合わせがたまらない。
 なかでも、昨日放送の第11話。殺人罪で闘技場での極刑を言い渡されたプッロが、最初は「さあ殺せ」であったのが第13軍団をけなされて立ち上がり闘っている様を、陰から歯をくいしばって見つめているヴォレヌス(カエサルから介入を禁じられている。介入したら自分のせいと言われるって、その殺人を依頼したのは実はカエサルじゃないか。ああ)。処刑人が登場するに及んで、ついに闘技場に乱入し、処刑人を倒し(隊長はむちゃくちゃ強いのである。ガリア8年たたき上げは伊達ではない)、プッロと退場するくだりは泣きました。
 その後、ヴォレヌスとプッロはローマ市民の間で大人気になり、落書きはされるわ(落書きは当時のメディアであったのね)、劇にはなるわ。カエサルはその人気に乗じてヴォレヌスを元老院議員にし、「慣れるまでそばにいろ」と言いつつ、実は護衛にしたのだが(そりゃ最強の元老院議員だろう)、カエサル暗殺遂行のために知らないでもいい家庭の秘密を聞かされるはめになり、あっというまに不幸のどん底に突き落とされるヴォレヌス。ああ、せっかく奥さんとラブラブになれたのに。かわいそすぎる。
 先が気が気ではないのだが、1週間あいてしまうので、アメリカ版DVDを先に見ようか迷うところである。

 チャングムは脇役が愉しかったのだが(記事はこちらこちらに)、「ROME」は主役が愉しいなあ。
 そういえば、カエサルの姪にして後の初代皇帝であるオクタヴィウスの母アティアの、わかりやすい悪役ぶりは、チャングムのチェ尚宮に似ているかも。しかし、悪女という点では、カエサルの愛人にしてブルータス@お前もか(口元が貧相)の母、セルウィリアの方がすごい。「カエサルは愛人に憎まれなかった」という塩野七生説にまっこうから対抗する陰湿ぶり。ついでに書くと、第2部の主人公であるオクタヴィウスは、期待にたがわぬ血も涙もなさである。役者は少年のころのほうがよさげなんだけど。

|

« イリス弦楽四重奏団コンサートのお知らせ | トップページ | Inn on the Park »

コメント

こんばんは。ホント、ヴォレヌスは幸薄そうですよねえ。
あんなに生真面目に頑張っているのに。

それにしてもセルウィリアですよ。あのドロドロとした
「死ぬまで一生恨みます〜」という鬼気迫るオーラがものすごいです。塩野さんが見たら卒倒しそう(笑)
アティアなんて単純でかわいいね、とうっかり思えてしまいます。
そんな女性陣に復讐の女神は大人気でしたね。

投稿: rivarisaia | 2007.08.18 22:28

ヴォレヌスはねー、
もうほんとに、かわいそうでかわいそうで。
お芝居でのヴォレヌス役の鬘もかわいそうで(笑)。
重傷なのに「もてる」と聞いて嬉しそうに出かける、
プッロの幸運を少し分けてあげてほしいものです。

ポンペイウス見逃しのくだりで、カエサルの
「彼らには何かの神がついているに違いない」には、
「ええもう主人公ですから」と突っ込んでしまいました。
カエサルに突っ込める日がくるとは。

それにしてもセルウィリア、後半になるにしたがって、
どんどんものすごいことになっていきましたねえ。
最後は史実どおり、別荘暮らしで終われるんでしょうか。
「ローマ人の物語」を期待した視聴者は驚いているだろうなあ。

投稿: きたきつね | 2007.08.19 08:06

プッロとヴぉレヌスは実在の人物ですよ。
ガリア戦記にも登場する有名な兵士です。

筋書きはフィクションを含みますが、登場人物はすべて実在というのがこだわりなのでしょう。

投稿: kko | 2011.07.18 18:54

ヴォレヌス隊長もプッロも実在の人物ですよ。
あのシリーズに架空の人物は一人もいません。
史実でも元老院議員に出世してます。
ただ、史実ではプッロもヴォレヌスと同じ大隊の
別の百人隊の隊長でした。
部下ではなく、よき同僚だったようです。

投稿: Japannavalcadet | 2014.07.03 14:08

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ROME」は主役が愉しい:

« イリス弦楽四重奏団コンサートのお知らせ | トップページ | Inn on the Park »