間食の読書
どなたが言ったのか忘れたのだが、本には「ごはん」と「おやつ」があるらしい。「ごはん」は仕事の資料など読まなければならないもので「おやつ」は必要がないけど読みたいもの。
しかし、「ごはん」とも「おやつ」ともつかない間食みたいな読書もあるので、必要があって調べつつ読み散らかしてしまうこともある。最近は「おやつ」の余裕がないしなあ。ここ数日間食がすごい勢い(図書館で)。
【その1】『〈現代家族〉の誕生』
岩村暢子(著)、勁草書房 2005年
内田樹さんが「体温が2度ほど下がる」と書いていらしたので見てみた。最近の主婦はろくに料理をせず、その母親世代はその食事写真を見ても我が子のこととは思わず。というような印象だったのだが。
読んでみると方向は少し違っていて、最近の母親世代の母親(昭和10年代生まれぐらいか)のインタビューなんだけど、戦後、価値観がどんどん変わっていって、専業主婦が誕生し、「幻想としてのおせち料理」が生まれ(自分は食べたことがない料理を本やテレビを見て作る)、自己実現を目指し、娘には干渉せず、いっしょに楽しみたい、という世代が誕生したのだった、という話だ。
自分や自分の親世代を考えると納得してしまった。
これを内田樹さんが「体温が2度下がる」と言ったことが面白い。やはり女性には家できちんと料理をしてほしいと思っているのかな。
追記と訂正:
「体温が2度ほど下がる」と書かれたのは、前著『変わる家族 変わる食卓』の現代の主婦の日常の食卓写真を見てのものでした。『〈現代家族〉の誕生』については、あまり隔たった感想ではなかったので訂正いたします。失礼いたしました。
『〈現代家族〉の誕生』の「あとがき」には、「人々の具体的事実や気持ちを拾い上げ、そんな人、そんな日が確かにあったこと、また、そう思う必然的な背景があったことまで見ようとしてきた」とある。労作である。
【その2】『あなたはどれだけ待てますか』
R.Levien(著)忠平美幸(訳) 草思社 2002年
「せっかち文化とのんびり文化の徹底比較」というサブタイトルがついている。時間の捉え方が文化によってちがう、という話。「思いやり」の度合いを調べるのに、アメリカの36地域で、わざとペンを落としてみたり、宛名を書いた封筒を「落ちてました」の付箋をつけて車のバンパーに挟んだり、社会心理学者の実験も面白い。歩く速さや郵便局の迅速さを指標にしたり。生活のペースのはやいところベスト3は、スイス・アイルランド・ドイツ。日本は4位。ワースト3はメキシコ・インドネシア・ブラジル。
著者は、わざわざ1章を日本に裂いて「日本人がとてもせっかちなのにもかかわらず心臓疾患が少ないのは会社が人間関係の精神的な支えになっているから」で、「義理」の感覚など日本を見習うべきだと書いてくれている。でも、その文化はもう終わってしまって、今の日本人は成果主義にあえいでいるんだよなあ。手帳ブームや時間管理の本が山のように出ているのは、文化不適応を起こしている日本人が多いからなのだなあ、と思う。
【その3】『結婚の条件』
小倉千加子 朝日新聞社 2003年
『〈現代家族〉の誕生』と合わせて読むと面白い。そりゃあ結婚率も出生率も下がるだろう。
【その4】『私という病』
中村うさぎ 新潮社
この人は頭がいい人なんだろうと思う。しかし、生きていきにくいだろうなあ。辛いだろうなあ。
人生は辛いことが多いなあ。
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コメント
超遅ればせに最近実感したんですが、
「自分でゴハンを作って食べるのは、人生の根幹である」
「適切なdisciplineを欠く人生は、確実に不幸になる」
で、適切なdisciplineを全うするのも結構辛いことではあるんですが、その辛さを乗り越える動機付けになるのが、いみじくも最後の行にお書きの「人生は辛いことが多いなあ」という洞察なんだと思うんですよ。
あとねえ、日本人がせっかちなのに心臓疾患が少ないのは、社会が割りと均一にせっかちだからだと思う。全員が時速120キロで走っている高速道路ではあんまり事故が起きないけど、そこに時速60キロの車が混ざると事故るのと同じで。
投稿: C12H22O11 in Canada | 2007.11.28 01:21
おお、久しぶり!コメントありがとう!
いやー、確かに「適切なdiscipline」を欠くのは不幸です。
「人生は辛いことが多いなあ」が動機になるかどうかは
人によるのではという気もするけれど。
ともあれ、自分でご飯を作って食べられるのは幸せなことだと思います。
「日本人のせっかち」については、
たしかに皆120キロで走ってはきたのだけれど、
「ゆとり」なんかのブレーキがかかった挙げ句に
成果主義が持ち込まれ、
最近は道路がぐちゃぐちゃな気がします。
本屋に行って棚を見ると特に。
投稿: きたきつね | 2007.11.29 17:29