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第80回アカデミー賞&「バベル」

 今日は第80回アカデミー賞授賞式の日である。脚本家協会のストライキがあったりして準備が大変だったのではと思うのだが、これまでの名場面とか、作品賞80本一挙紹介とか、アカデミー賞はどうやって決められるか、など面白い。作品賞は会員が5本ずつ推薦、部門賞はその道のプロが候補を選ぶらしいのだが、「アカデミー賞を決めるプロセス」を見て確信したのは、昨年の審査員は絶対「無間道」を見ちゃいないだろうということだった。脚色賞はだめだろう、やっぱり。

 アカデミー賞授賞式シーズンになると、BSで受賞作をまとめて放映するのだが、この間、やっと「BABEL (バベル)」を観ることができた。
 モロッコに「2人になるために」出かけたアメリカ人の夫婦。妻がバスの中で何者かに狙撃される。撃ったのは羊飼いの少年。その銃はハンティングに来た日本人が置いていったものだった。一方、アメリカに残された子供達は、乳母の息子の結婚式のためメキシコへ行くことになる。
 モロッコ、メキシコ、日本と一見ばらばらに見える場所は確かにつながっていて、しかし、そこにいる人々はどうしようもなく孤立している、という話だと思う。
 夫婦がモロッコへ行くというと、どうしても連想するのは「シェルタリング・スカイ」で、あれも(ディス)コミニュケーションの話だった。ジョン・マルコビッチ(好き)と砂漠が見所だが、隣で目をむかれて死なれるのは困ると観るたびに思う。だいたい、自分の場所で話ができないものが違う場所でできるわけはないんだから、地元でちゃんと話せよ!と思うのだが、そうもいかないんだろうなあ。
 アメリカで留守を預かる乳母は、息子の結婚式に出られるはずが、事件によってその連絡がつかなくなり、子供から離れるわけにはいかず、メキシコに連れて行く決心をする。しかし、不法就労でアメリカ人の子供連れということは、帰りに大変なことになるのだった。
 モロッコの子供たちは悪意はなかった。ただ腕を試すために軽い気持ちで撃っただけ。しかし、このご時世、イスラム国でアメリカ人が狙撃されるとテロとされてしまうので、事はどんどん大きくなる。
 その銃を贈った日本人の、妻は銃で死に、娘は耳も口も不自由でコミュニケーションを切望している。
 時間が前後していてわかりにくい(もしかすると円環構造を狙っているのかもしれないけど、あまり成功していないと思う)のだが、この3つの場所で起こっていることは確かに関連していて、うまくコミュニケーションできないという点でも、想像力の欠如(バスを撃ったらどうなるか、とか、贈った猟銃で何が起こるか、とか、子供を連れて国境を越えたらどうなるか、とか)が悲劇を引き起こしている点でも共通している。
 菊池凜子ちゃんは、台詞がなかったことも幸いして(あったらたぶんノミネートはなかったかも)、いい役だったと思う。コミュニケーションができず切望している象徴のような役柄はある意味主役だろう。
 「バベル」は「バベルの塔」のバベルなんだなあ。
 東京のマンションは「バベルの塔」の象徴かも。日本社会の描き方が、まともでよかったとも思う。
 日本での紹介のされ方は不幸だったけどね。

20080224babel2

 今回も「浅野忠信オスカー逃す」というような見出しがあったのだが、ノミネートされたのは、浅野忠信じゃなくて、映画なの。ノミネートされるまでは、おそらく知りもしなかっただろうに、大騒ぎして。もっと映画を観てくれ!!と、むかむかしつつ、これは何かに似ていると思ったら。

 日頃は関心も抱かず支援もしていなかったのに、成功したとたん、あたかも自分の手柄であるかのように騒ぎ立て、すりよってくる親戚。

 これだ。ろくなもんじゃない。

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コメント

こんばんは!
昨日はコメント、ありがとうございました。
しかも、リンクまで。
で、バベル。
あたしも偶然見てたので、嬉しくなってコメントしました。
途中まで、なにがなんだかわからなかったのですが、
ははーん、なるほど、そーゆーことか、と最後にわかりました。
↑頭が弱いのかしらん・・・
ところで。
バベルときくと、ロデムを思い出すのは、あたしだけでしょうか・・・。

投稿: | 2008.02.25 23:49

さっそくのコメント、ありがとうございます。
「バベル」は、たしかに描き方がわかりにくいと思います。
見直した方が面白いかも。
「バベル」と聞くと「ロデム」というのは普通です。
しかし、今、頭の中で歌を歌ってしもべの名前を思い出そうとしているのですが、サビしか浮かんできません。うーむ。

投稿: きたきつね | 2008.02.25 23:57

砂の嵐にかくさ~れた♪
バベルの塔に住んでいる
超能力人間♪バベル~2世~♪

ですか?
突然すみません。全部歌えます(笑)

私も作やアカデミー賞の授賞式見てました。
コーエン兄弟に殆ど持っていかれちゃったので少し残念な気がしました。
「バベル」も少し前に見ました。
私は坂本龍一の「美貌の青空」が暫く頭から離れなくなりました。

投稿: mimimi | 2008.02.26 10:08

はい、それですっ。
アカデミー賞は、
顔の好きなハビエルくんとダニエルくんが撮ったので、
これはこれでいいような気がしています。
「バベル」は音楽がよかったですよね。

投稿: きたきつね | 2008.02.27 00:15

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