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パンズ・ラビリンス

 札幌駅の裏に「蠍座」という映画館がある。新作ではない良い映画をかけるところで、だいたい3本同時上映、1本で800円、2本で1200円、3本で1700円。「ジャブ77」亡き今、札幌で唯一の名画座である。
 木をたくさん使ったロビーにはコーヒーも飲める落ち着けるスペースがあって、早く着いたら、チケットを買って(ちゃんと整理番号をくれて、上映10分前に順に中へ入れてくれる)、そこで本など読んでいても楽しい。椅子がまた座り心地がよくって、飲み物も持ち込み可。
 まだすることはあるのだけれど、しばらくかかっていた仕事がほぼ終わったので、やっと今年の初映画館を蠍座で敢行。「パンズ・ラビリンス」が最終日だったのである。ほとんど満席。よかったよかった。

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 「パン」とは左のお人。

 PG12ではあるものの、ファンタジーだと思って中学生の子供と一緒に行くと大変なことになる。いや、かえっていいことかもしれない。
 これは戦争の映画なんである。この映画のファンタジー抜きの部分のようなことは、きっと本当にあったんだろうと思う。とても重い。
 主人公は子供で無力で運命にあらがいようがない。そこで登場する「パンズ・ラビリンス」。「実は貴い生まれ」というのは、一時期オカルト雑誌で前世の知り合い(きまって高貴な生まれなんだ、これが)を探すコーナーでもよく見たが、これは、ファンタジーがないとやってられないだろう。
 3つの試練を乗り越えると本来の生まれである地下の国の王女に戻れるという希望。その試練は、泥まみれになって樹を救うことであり、誘惑に負けないことであり、他者を犠牲にしないことである。幻の国は現実のすぐ隣にあって、実在する(たぶん)。

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 この国は実在してほしいと願うばかり。

 観終わったあとは、厳粛な気持ちになってしまったのだが、一方で、余計なことも考えてしまった。

【その1】
 考えてみるとマンドラゴラを映像で見たのはこれが初めて。牛乳に漬けると戻って、おまけに臭いのか。
 映像でもうひとつ、「手の目」の「んばー」というヴィジュアルが、なんというか衝撃であった。実際には動くのに効率の悪いことおびただしいデザインなんだけど(手で作業をしたら目が使えない)。
【その2】
 お母さんの再婚相手である血も涙もない大尉(まあ子供が理由で結婚したんだろうし、女一人ではとっても大変な事情もわかるが)、初めはなんてひどい野郎だと思ってみていたのだが、しまいには、その終始一貫ぶりと強固な意志に感嘆寸前になる。裂けた口を自分で縫うのは大変なことだ。自分の頭で考えず、体制に盲従する人ではあったのだが。
【その3】
 「大尉」って、スペイン語で「カピタン」なのであった。「かぴたん」というと、白いひだひだ襟の黒服の南蛮人を連想するのだが、出島にはスペインから軍人が来ていたのだなあ。

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