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「浮き雲」

 今日の午後と明日は研修なので、早めに更新。
 相変わらず、帰宅してちょっとだけ映画か録画を見るのが楽しみの日々(来週から少し楽にはなるはず)。wowowでアキ・カウリスマキの「街のあかり」「過去のない男」「浮き雲」を深夜に連続してやっていたので、録画しておいて「浮き雲」をかけたら、最後まで見てしまった(睡眠時間…)。
 むかし一度見たはずなのだが、忘れている。
 改めて甲羅を経てから見ると、いやーいい映画だ。
 バスの運転手をしている夫と老舗レストランの給仕長をしている妻が、相次いでリストラされる。その後がもう踏んだり蹴ったりの連続。妻はプライドも有り金もむしり取られた揚げ句に場末のスナックの従業員に(でも結局給料はもらえず)。夫は寡黙ながらも見栄っ張りで、耳の異常で運転免許がなくなるという事態なのに「施しは受けない」と失業手当の支給に必要な書類を焼き捨て、しかも仕事はしない。挙げ句の果てに、ルーレットに掛けてお約束通り大金を失う始末。
 でもね、この寡黙で喜怒哀楽もあまり顔に出さないご夫婦の間には確かに愛情がある。給料をもらえない妻のために黙って雇い主のもとに乗り込んだ夫が逆にぼこぼこにされ、こんな顔じゃ帰れないとしばらく家を空けたのに対し、「許さない」と言いつつ一緒に家に帰る妻、とか。
 とても静かで淡々と話が進むだけに、音楽が沁みるところもいい。レストラン閉店の日のバンドの歌やラストシーンにかかる歌に、泣けてしまう。
 しかし、男は、どいつもこいつも頼りない。だって、失業したほとんどが職に就こうとしないで、酒におぼれたりしているのよ。また店をやろうというときも、カティ・オウティネン演じる妻におんぶにだっこだし。カティもしっかりしすぎで、だいじょうぶか?と心配だったのだが、店をやろうというときに、テレビもソファも売り払った部屋で喜々としてプランを考えているところは楽しそうだった。根っから職業人なのね。…フィンランドってこういう国なんだろうか?それともカウリスマキの見方?
 まあ、不況だろうが何だろうが人生は続くのだけれど。

20080726cinema
 最後は、ああ、本当によかったねーと泣いてしまう。
 顔が黒くて細いわんこもよろし。

 しかし、「かもめ食堂」の元ネタって、結局この映画なんじゃないか、マルック・ペルトラが出ているぐらいだから、「かもめ食堂」のスタッフは知っていて当然だろうし、あれはオマージュなのか、だったら、もっとはっきりカウリスマキに献辞を捧げてもいいのではないか、と、どうしても思ってしまったのだった。

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