「その名にちなんで」
まだ仕事終わらず。例によって下書き(4月に書いてた)に加筆。
ずっと見たかった「その名にちなんで」がwowwowで。
ちなみに、7月13日11:40から再放送、翌日7月14日17:00からは「ダージリン急行」なので、来週は、なんと2日連続でイルファン・カーンが見られるのである。ニーズは多くないとは思うけど。
原作は、ジュンパ・ラヒリの「その名にちなんで
」。これと短編集「停電の夜に
」を今年のお正月に読んだのだが、とても好きなのだった。アメリカに移民したベンガル系インド人の心の機微が静かに書かれていて、とてもよい。新作短編集「見知らぬ場所 」も出ていたのね。
「その名にちなんで」の「名」はゴーゴリの名前だと思う。ゴーゴリの父アショケは、学生時代、手にしていたゴーゴリの短編集により汽車の事故でからくも命を救われる。事故がきっかけでアメリカに渡ったアショケは、アシマと見合いで結婚する。ベンガル人は内輪で使う名前と公式の名前を持っており、アショケとアシマは公式の名前で、夫婦間で呼び合うときには使わないらしい。ゴーゴリの名前はインドに住む祖母に付けてもらう予定の名前が間に合わず、アショケがつけた。小学校に上がるときにニキルという公式名に改名しようとするが、子供なので変えようとしなかった結果、授業中に馬鹿にされたりなど嫌な思いをし、大学に入るときにニキルと改名する。建築家になったゴーゴリにはまたいろいろなことがあり、ゴーゴリの名前の由来を聞かされた直後に、アショケは心臓発作で死んでしまう。結局、ゴーゴリという名前でもニキルと名前でもうまく生きていけない主人公…と書いていても、あまり神髄が伝わらないような気がするんだけど、名前になぞらえて、2つの文化の間で生きなければならない心を描いているのが肝。
映画は淡々と事実を追っているので、原作を知っていると嬉しいのだが、原作を読んでいないと淡々としすぎて伝わらないことが多いかもしれない。
一家の写真。
個人的には、この映画の主人公はゴーゴリ(アジャイ・デーブガン似の濃い顔で、最初はどうなるかと思ったが、いい子に育ってよかった)ではなく父親のアショケで、アショケを演じたのがイルファン・カーンなので、イルファンの映画としていいのである。アシマを演じたのがタッブーで原作のイメージより遙かに美しく、差し挟まれるインドの風景やサリーの数々も見ていて楽しかった。できれば、マクシーン(ゴーゴリの彼女でいいお家の娘さん)のお屋敷をもっと映像で見たかったな。
原作になかったシーンがいくつかあったのだが、遺灰を河に流すシーンとアショケが亡くなってゴーゴリが頭を剃るシーンはよかったと思う。回想で一瞬映ったイルファン・カーンのスキンヘッドも素敵だったし。ラストシーンがアショケと子供だったゴーゴリが遠くまで行くシーンだったのもよかったのだが、願わくば、灯台の先に砂嘴があるような原作通りの景色で見たかったなあ。
予告編。いまひとつ原作の良さが伝わらないような。
それだけ原作が好きなんだけど。
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