« 昨日の気温10度 | トップページ | 「黒社會2 以和為貴」日本語字幕版 »

トー先生トークイベント・イン・ゆうばり

*写真を差し替え、記事を追記しました。

 今日は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で「黒社会2」「ジョニー・トー監督トークイベント」「殺人犯」がある日。仕事あるけど、寝不足だけど、朝一番のJR特急で夕張に行きました。
 いろいろと書きたいことはあるのだが、まず、個人的メインディッシュのトー先生トークイベントのご報告を。

20100228yubari1

 「黒社会2」の部屋に行く前にトークイベントの部屋を覗いてみると、けっこう狭そう。で、上映後、ほんとうはエンドロールを最後まで見るのだが、えらい勢いで人が出て行くので、いやな予感がしてエンドロールが終わる前に出て、行ってみると。

20100228yubari2

 えらい行列。そりゃあ、並ぶわなあ。自分だって、このために夕張に来たようなものだし。結局、列は二重三重になり、補助椅子が出、部屋の酸素が足りなくなりそうな、ぎっしりぶりだった。全員座れたのかいな。100人ぐらい入っていたようだけど。
 しかし、並んだ甲斐があって、前から3番目。

20100228yubari3

 見え方はこんな感じ。けっこう近い。その時、距離は3メートル、という感じだろうか。たぶん、司会は有名な方らしく、会場にも有名人がたくさんいたのだろうけれど、誰が誰かはわからず。
 トー先生は上機嫌で、一つ聞くと、喋る喋る喋る。前日の審査会でも「こんなに喋る審査委員長は初めて」だったとのこと。しかし、監督がおっしゃるには「あれでも疲れて喋らなかった」んだそうです。日本に来るぎりぎりまで映画の撮影で、あまり寝ていないとか。

20100228yubari4

 通訳さんとお話。

20100228yubari5

 考え中。指輪がきらきらしてました。

20100228yubari6

 通訳さんのメモ帳を奪い取り、映画祭の名前を書いているところ。新作映画の題名も書いてらした。

 トークイベントは、だいたい1時間ぐらい。
 まず、司会の方が映画祭の印象や夕張の印象を聞いたところ、「こんな小さな町で、こんな映画祭をするなんて素晴らしい」とのこと。「レストランもなく、みんな一緒なので親しくなれる」とも。「レストランがないと、グルメな監督としては淋しくないですか?」との問いに「いや、もう十分。この3日間で太ったぐらい」と笑いを取っていた。
 その他のお話は(ちょっと順不同)、

 (ぼくは「阿郎的故事」のときから監督の映画が好きで、という司会の方に)「阿郎的故事」のときには、自分は残酷な監督だったと思う。子役を泣かせたいときには殴って泣かせていた。最後には、子役は、自分が泣かなければいけないときには、助監督に殴ってくれと言っていた。最後のシーンもスタントマンが首を折りそうで、やるかどうか一晩考えた。結局やることにして、救急車を待たせておき撮影したが、撮影したフィルムは見なかった。取り終わってスタントマンが運ばれていき、助監督から「大丈夫」と聞いたときには安心した。

 (昔のプログラムピクチャーから、どのようにして現在のようなスタイルになったのか、という質問に)昔は言われたものを何でも撮っていた。売れたのは俳優のおかげだろう。1994年から自分はこの先監督としてやっていけるかどうかを考え、96年は1年間映画を撮らなかった。その時に会社を作り、その後は撮りたいものを撮っていると思う。

 映画は、時代やそのときどきで変わるものだ。若い人にはどんどん映画を撮ってほしい。

 自分は、映画を撮るときには、ストーリーボードは作らない。その場でどんどん変わっていく。

 自分にとっていい役者は、一般的な「いい役者」ではない。自分の話を聞いただけで、ちゃんとやってくれる役者がいい。ただし、言われたことだけでなく、自分で作っていけなければならない。(「それでいつも同じ役者なんですね(笑)」という司会者が続けて「サイモン・ヤムについてはどうですか。監督に似ていると思うんですが。分身ですか?」と問うと)自分はあんなにハンサムではないよ(笑)。しかし、彼も話を聞いただけで、わかって、ちゃんとやってくれる。
 
 若い頃、やりたい職業は4つあった。1つめはTVBの仕事、2つめはサッカー選手、3つめは警官、4つめは電話の技術者。TVBの試験の翌日が電話会社の試験だったのだが、TVBからその日に合格通知が来たので、電話会社は受けなかった。
 (「いや、電話会社が先じゃなくてよかったですよ」という司会者に)もし、警察に入っていたら、今ごろはもう定年退職だろう。監督なら、黒澤のように80歳まで仕事ができる。

 (映画と実社会との関連は、との質問に)香港は返還されて大きく変わった。「黒社会2」のジョニー(間違いました→)ジミーには香港のすべてが詰まっている。自分は映画はその場その場で作っていくが、リサーチには2年かけた(「かけた」か「かかった」かは不明)。

 (「ヴェンジェンス 復仇」の日本版チラシを見せながら司会者が「なんでこんな長いわかりにくいタイトル(「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」でしたっけ)にしたんでしょうね」という話をすると、チラシを見て)たしかに長すぎるし、内容を反映していないのではないか。今から変えられるかどうかわからないが(笑)。ともあれ、映画の主題は「記憶をなくしても復讐は成立するか」だ。

 (今、撮っている映画は、という質問に)変わるから、今、言わないほうがいいと思う(笑)。とりあえずタイトルは「奪命金」(通訳さんのメモ帳にタイトルを書く。通訳さんが通訳できないと会場からフォローあり)。

 9月に映画祭をする。政府が主催する事業で、自分は映画部門のチーフだ。名前は「新浪潮」という。(通訳さんのメモ帳を取って漢字を書く。訳に通訳さんが困っていると会場から「ニューウェーブ」とフォローが入ったが)いや、「フレッシュ・ウェーブ」だ。若い人のための映画祭で、コンペティション部門と非コンペティション部門がある。非コンペティション部門は学生のためのものだ。

 … 香港人らしい通訳さんが頑張ってはいたのだが、いかんせん、専門的かつ抽象的な話で、日本語を聞き取ったり日本語に訳したりするのに難儀していたため、上記の日本語訳の文責は私にあります。
 社会とか自分の立場を考えたうえで、ばりばり仕事をしている方だなあ、現場での化学反応を重視しているんだなあ、若い人を育てることにも情熱を燃やしているのだなあ、という印象。通訳さんが日本語に訳している間、会場に視線を巡らしていらしていて、何度か目が合ったような気がしたのだが(きゃあ)、眼光鋭かったなあ。96年の後というと、「暗花」が97年だったっけ。
 充実した1時間だった。行った甲斐がありました。

|

« 昨日の気温10度 | トップページ | 「黒社會2 以和為貴」日本語字幕版 »

コメント

さっそくのレポートありがとうございます!どこより早いんじゃないでしょうか(愛がこもっているとという条件も込みで)
行った甲斐がありましたね!

「阿郎的故事」はみてないのですが、「愛的世界」というこどもが主役のトー監督作で、こどもにも凄い(あぶない)スタントまがいのことさせてるし、まるっきり容赦なかったので、「なぐってでも」というのはうなずけます。でも強烈・・・また、自分から殴ってくれといった子には、今からでもたくさんほめてあげて飴とかあげたいです。
(今は大人か・・・)

昨晩、黒社会2を見返しました。
ジミー仔の姿に、かわっていく香港に対する不安のような気持ちが込められていると思いましたが、今、どのように思ってらっしゃるのでしょうね。

監督と一緒に、どなたかいらしてる様子でした?

投稿: ゆずきり | 2010.02.28 21:40

ありがとうございます!とにかく忘れる前に書かなくちゃ、と(笑)。
監督はご自分でも「容赦ない」と思ってるみたいでした。通訳さんは「残酷」と訳していましたが、「容赦ない」のほうがいいですね。あの子は、今は大人ですねえ。
「黒社会2」は、あとで書きますが、日本語字幕でほんとによくわかりました。ジミー仔が香港だというの、よく分かります。勇さんは中国。とすると、どう考えても明るい展望ではないんですよね。時間不足で聞けなかったんですが。

同行者は、見たところいなかったように思います。林雪が見たかったなあ…。

投稿: きたきつね | 2010.02.28 21:50

お疲れ様です。
私もお陰様で現地に行くことができました。
監督が目の前でお話しているというだけで
本当にワクワクするものですね。
きたきつねさんのレポートで、細かいところを思い出せました。ありがとうございます!

会場の方の質問もとても良くて、あの調子でほっておけば一晩中でも語りつくせないような勢いでしたね。

「奪命金」は個人的にとても楽しみにしているのですが、その撮影途中で夕張にいらしたというだけで、仕上がった作品が身近に感じられるのではないかと、ますます楽しみになりました。

投稿: りら | 2010.02.28 23:20

りらさんもいらしていたのですね。
トー先生が入ってきたときには、思わず立ち上がりそうになりました。
会場から質問された方々は、司会の塩田さんの知り合いというか、わりと業界っぽい方だったように思います。
時間が1時間だったのが残念でした。2時間ぐらいほしかったですねえ。
「奪命金」、楽しみですね。

投稿: きたきつね | 2010.03.01 09:28

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: トー先生トークイベント・イン・ゆうばり:

» 阿郎的故事 [ときどき映画館日記]
英語題 All About Ah Long 邦題 過ぎ行く時の中で(←抽象的すぎる) 監督 杜琪峰(ジョニー・トー) 出演 周潤發(チョウ・ユンファ) 張艾嘉(シルヴィア・チャン) 黄坤玄 呉孟達(ン・マンタ) 王天林 1989年香港新藝城企業有限公司 Cinema City Co.,Ltd. 今年20..... [続きを読む]

受信: 2010.03.23 05:25

« 昨日の気温10度 | トップページ | 「黒社會2 以和為貴」日本語字幕版 »