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「老港正傳」

 こちらの記事を書いていて思い出したので見直した。

 主人公の黄秋生さんは銀都戯院で働いているのである。最初の方に銀都戯院の上から見下ろした裕民坊が出てきて、心をわしづかみにされる。
 お話は、思想的に大陸寄りで北京に行くのが夢のよき市民秋生さんの半生、なのだと思う。生活はつましく、しかし寄付なんかもしちゃうので、妻のテレサ・モウにも苦労をかけっぱなし。息子の鄭中基は仕事を得るのに苦労し、「左派の学校なので警官になれず」(って言ってたけど本当なのか?)、勤めたレストランは喧嘩して辞め、大陸と貿易をしている怪しい会社に就職するものの賃金を払ってもらえず、返還歓迎のTシャツを売ったり大陸で苦労したり。幼なじみのカレン・モクもアメリカに渡ったりするのだが、やっぱり大変だ。
 お話は淡々と進むのだが、ストーリーよりも「集體回憶(集団的記憶)」的な要素のほうが心に残った。お茶の間のように賑わうかつての映画館とか返還とか経済不況とか空港の移転とかSARSとか、香港人の記憶が、閉館する映画館(舞台になっている銀都は本当に閉館してしまった。いっぺん行きたかったな)になぞらえて綴られているような。

 こちらは主題歌「星光伴我心」。いい歌だ。
 歌っている息子役の鄭中基はほんとに歌が上手いのだが、もうちょっと歌手活動をちゃんとやってはどうかと思う。CDは滅多に出ないし出てもコピーガードされていてiPodに落とせないのよ。

 ああ、それにしても觀塘のような古きよき香港は、旅行者の観点ではあるのだが、住む人の快適さを尊重した形で(ショッピングセンターは一部の経済尊重であって住民尊重ではないと思う)残してほしいなあ。

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コメント

私が一番印象に残ったのは、「大陸寄り」の市民の姿でした。自由の土地香港ではいろんな人がいて当然ですが、そうか、こんな人もいたのか、と。それを香港的なものの固まりみたいな秋生さんがやってるのが新鮮でした。
觀塘の裕華大厦、徐々に収購が進んでいるのか、行くたびに生気が減っている気がして。物華街のあたりはかなり活気がありますが。
行けるときには行っておきたいと思っています。

投稿: ゆずきり | 2010.10.17 19:21

私も同感です。

旅行者の観点ではあるかもしれないが、
古き良きものは維持してもらいたいです。

たとえば旺角の西側一体がランガムプレイスになってしまったけれど、
そのランガムプレイスは多くの人で賑わってはいるけれど、
鳥かごを持って歩いていたようなおじさんたちとか
誰にも気づかれず、この街から立ち去った人々も多いはずだと思います。

觀塘は行ったことがないので
見てみたいです。

投稿: くろけん(学芸員Kあらため) | 2010.10.18 03:17

お返事が遅くなりました。

ゆずきりさん
「こんな人もいたのか」、実は私も思いました。香港は大陸や共産党から逃げてきた人が多いという印象がありますものね。秋生さんを大陸寄りにすることで、返還前後や返還後は関わらざるを得ない本土との関わりを描きやすかったのかも。
裕華大厦、葛菜水を飲んだ古いビルですよね。あの中、好きなんですが、かつてはあれより活気がなくなったのか…。住んでいる人たちは減っているのでしょうか。

学芸員Kさんあらためくろけんさま
ご無沙汰しております。ランガムプレイスができる前の雀仔街、好きでした。今でもあそこを通ると理不尽な気持ちになります。
觀塘、早いうちに是非!

投稿: きたきつね | 2010.10.18 22:38

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