「Johnnie Got His Gun !(ジョニー・トーは戦場に行った=監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて)」
ゆうばりファンタで最初に見たのがこれ。これを見るために金曜日は年休をとったといっても過言ではない。
フランスのイブ・モンマユー(Yves Montmayeur)監督が撮ったドキュメンタリーである。撮影は2003年ぐらいから数ヶ月前ぐらいまでの長きにわたったらしい。トー監督のインタビューに映画のシーン、キャスト・スタッフのインタビューが差し挟まれる。ヤムヤムこと任達華による「銀河映像ビル案内」もある。
出てきた映画は「大事件」「PTU」「鎗火」「文雀」「黒社会」「放・逐」「奪命金」(順序はちょっと不同)。インタビューがあったのは、撮影の鄭兆強、リッチー・レン、ヤムヤム、秋生さん、梁家輝、古天楽。中国冰室でインタビューを受けていた金髪にサングラスのスタッフは誰だろう。
映画は好きなシーンが多くて思わずにこにこしてしまう。
たしか最初は「大事件」から始まった。文華新村のアパートの廊下の撮影シーン。あの廊下は、狭くて曲がりくねっていて、ギャングには有利だが警察には大変、だから撮影に使ったとのこと。撮影も大変そうだったなあ。冒頭の銃撃戦長回しも出てきて(全部見たかったけどさすがにそれは無理か)鄭兆強が苦労を語っていた。
「PTU」は尖沙咀の通利琴行の前とか中国冰室とか。「鎗火」は楽口福酒家のネズミが殺されるシーンとジャスコのシーン。リッチーは「大事件」の出番待ちと思われれる茶餐廳の店頭のテーブルでインタビューを受けていた。あの茶餐廳は貸切なんだろうか。
トー先生の会社のビルはたしか大角咀だったと思うのだが(【訂正】觀塘でした。行ったときの記事はこちらに)、ビルの隙間から高速道路ごしにちょっとだけ海が見える。もしかして、空港バスからちょっとだけ見えるのかしら。
「放・逐」のマカオのホテルのセットは、会社のビルの屋上に作られていた。ヤムヤムが言うには「撮影で壊したり汚したりするから、どこのホテルも貸してくれない」とのこと。ヤムヤムは「監督と一緒に仕事ができて幸せ」と言っていた。電話で「すぐ来い」と言われたりするらしいけど。
監督のインタビューで印象的だったのは「ヒーローは法の下で任務を全うする者。任務(法だったかも)とは、理想・正義・友情(たぶん)。だから、ギャングにもヒーローはいる」という話。あと、80年代の香港映画は決まり切った形で、それで銀河映像を作ったとか、香港返還のときに歴史の転換点にいると感じて「黒社会」を撮ったとか、むかしのコッポラやスコセッシが好きだったが90年代以降は何もないとか、その他にもいろいろあったのだが、全部思い出せない。もういっぺん見たいなあ。
昨年のトー先生のトークイベントと呼応する話もあって面白かった。「映画監督じゃなかったら、電話会社の仕事か警察だったかもしれない」とか。秋生さんが言っていたのは、「照明がついてカメラがセットされたときには、役者はすべてをわかっていなければならない。監督を理解していることが必要。さもなければ、俳優は物でしかない」ということ。監督が「わかってやってくれる役者が必要」と言っていたのと見事に対応していた。秋生さんやヤムヤムや梁家輝や林雪はトー先生とわかりあっているんだなあ。
終わってから、モンマユー監督のインタビューがあった。監督は三池崇史や日本のピンク映画のドキュメンタリーを撮っていて、映画についてのインタビューを撮っている人らしい(IMdbのページはこちら)。
撮るにあたっては、なるべくトー先生の映画に溶け込むこと、たとえば、映画とドキュメンタリーの映像が区別がつかないよう心がけたとのこと。なるほど、それはよく撮れていたと思う。撮影は香港に行くたびに少しずつ行ったとのこと。
トー監督は、香港映画をもっと広げるために、外国と仕事をしたいらしい。香港と香港映画への愛が伝わってくる。モンマユー監督によるとドキュメンタリー撮影は二つ返事でオーケーだったらしいのだが、理由はこのあたりにあるのかも。
こちらは「奪命金」についてのインタビュー。
字幕は、下に英語字幕、右側に日本語字幕だった。日本語字幕は、ゆうばりのスタッフがつけてくださったものらしいのだが、惜しむらくは、時々日本語がおかしかったり意味が通らなかったりして(英語字幕の方がわかりやすいこともあった)、あまりよくなかった。最初は日本国外でつけたのかと思ってしまったぐらい。せめて出てきた映画の場面ぐらいは見ておいておいてほしかったような(「ギョロ目」が「アイボール」じゃわかりませんて。あと林雪はラム・スエットじゃないし)。大坂アジアン映画祭ではどうなるんだろう。
ドキュメンタリーは権利関係がむずかしいらしいのだが、「Johnnie Got His Gun !」は海外でDVDが出る(「出ている」のか「出た」のかは不明)とのこと。日本でも「いいディストリビューターがいれば」とのことなので、ちゃんとした字幕をつけて、どこかで是非とも出してほしい。その前にどこかで輸入盤を買えたら買ってしまうかもしれないけど。
【2013年2月追記】
2013年2月16日に「監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて」のタイトルで全国公開されることになりました!公式サイトはこちら。
【2013年3月追記】
東京出張のついでに見てきました。字幕はまともになっていました。よかった!記事はこちらに。
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