「柔道龍虎榜(柔道龍虎房)」
BS11で放送されるのを発見し、再鑑賞。
テレビガイドで発見しTwitterでつぶやいたところ、BS11のサイトと一部のテレビガイドには同じ時間帯に「悪魔のくちづけ」が載っていることが判明し、ほんとに放送されるのかどうか気を揉んだのだが、無事放送されて何よりであった。
ジョニー・トー監督が黒澤明監督に捧げた映画である。
予告編。
最初動画が見つからなくて焦ったのだが、原題と日本語タイトルは微妙に漢字が違うのね。
香港版VCDもあるし、日本版のDVDも見ているのだが、実は、最初はそれほどいいと思わなかったのよ。しかし、今回見直して泣いた。いい映画だ。
かつては柔道が強かったらしいルイス・クー。今は酒場で働き、酒と博打に溺れる自堕落な生活を送っている。後でわかるのだが2年前に試合を放棄したらしい。そこへ爽やかに現れる熱き血潮のアーロン・クォック。ルイスに柔道で挑戦を挑む。ほぼ同じ頃、日本でスターになることを夢見るチェリー・インが酒場で歌わせてくれとやってくるのだが、ルイスはそれどころではなく、2人をつきあわせて赤いミニバスに乗り込み、ゲームセンターで大金の入った鞄をちょろまかして再び博打。その鞄の持ち主(チョン・シウファイさん)やチェリー・インの元の契約主(チェリーとリアルで結婚しちゃった陳小春)やらが店にやってきて追いかけっこの末大乱闘(よく見るとほぼ全員柔道ができる)。隅っこには柔道がめちゃめちゃ強いレオン・カーフェイが静かに座っていて、ウィンクと共に去っていく。いつのまにやら、店では、ルイスがギターを弾き、チェリーが歌い、アーロンがサックスを吹いている。柔道の師匠が試合がもとで亡くなったり、いろいろあった末、ルイスはついに自堕落な生活を脱し柔道に復帰、ついにレオン・カーフェイと戦って勝つのであった。
…というのがあらすじだと「思う」のだが、胆はあらすじじゃないのよね、たぶん。変な要素もたくさんあって、青春もののようでもあって、でも誇りを取り戻す物語で、そのバランスが奇跡的だと思う。
いや、変なのよ。たとえば、冒頭、いきなり、グラスホッパー(草蜢)のお兄ちゃんである蔡一智(3人の中で一番好きなの)が変な歌詞の「姿三四郎」を歌い出すし。口癖は「僕が姿三四郎、君が檜垣(姿三四郎のライバルらしい)」だし。チョン・シウファイさんも変だけど、元柔道家で、ルイスに妙に好意的で、柔道しながら「一生かけて恩と借金は返せ!2割引きにしてやる!」とか言ってるし。ルイスとアーロンとチェリーが三重肩車で木に引っかかってる赤い風船を取るし。
この変さは何なんだろう。スタッフにワイ・カーファイの名前は入っていなくて、彼の変さとは明らかに違う気がする。
でも、物語の本質は「誇りを取り戻す」ことで、「誇りを取り戻す」のは香港映画の王道だとやっぱり思う。ルイスとアーロンが嬉しそうに柔道するところでどうしても泣けてしまう。
お金を拾うチェリーとか(お札に執着するけど卑しくないのは元々お嬢様という設定だからなのかな)、ルイスとチェリーの靴のやりとりとか、香港の街のディテイルとか、細かいところもすごくいい。乱闘とかトイレのシーン、最高。
チョン・シウファイさんはこの映画の役が一番好きかも。レオン・カーフェイもかっこいいのよね。一智もいい役だ。
ああ、うまく説明できない。でも、とにかくいい映画なのよう。
「姿三四郎」は基本的に蔡一智が歌うのだが、最後は徐小鳳のこれがかかる。1973年の曲らしい。
日本語の歌詞がわかると、また感じ方が違うんだろうなあ。「泣いてもいいから前を見ろ」だもんなあ。泣けるなあ。
途中、チェリーたちがステーキを食べるレストランが素敵なのだが、最後の特別鳴謝に出てきた「亞士厘道星加坡餐廳」なんだろうか(openriceの記事はこちら)。
【追記】
その後、日本版DVD特典のトー先生インタビューをちょっと見たのだが、「香港では柔道は古くさいといういうイメージでお笑いと結びつけられやすいが、そうはしたくなかった」「あと人生が半年だろうと50年だろうと『今を生きる』ということを描きたかった」などと話していた。うん、「今を生きる」とか、ある意味「希望」のようなことが根底に流れるテーマなんだよね。
ルイスが身を持ち崩した理由は後半明らかになるのだが、ものすごく控えめな書き方で、ある意味ストーリーの根幹なのだがネタバレにもなるので、あえて上記の「あらすじ」には書かなかった。
あと、これで蔡一智を知った方に是非ともお伝えしたいのだが、本業は歌手で、ほんとは歌も踊りもうまいんです!
ちょっと古いんだけど、アーロンと共演した動画があった。関連動画でいろいろ見られる。衣装が変だったりするのだが、またそれがいいんだよね。
【2014年6月15日追記】
こちらで教えていただいたのだが、件のレストランは、佐敦の馬華餐廳とのこと。openriceのページはこちら。
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