『増補改訂版 ヒグマ』
まだまだ続く繁忙期。いきなり出張が入り、明日から2泊3日で東京である(せめてもの娯楽として築地に行く予定)。
しかし、ふと集中力が切れ、買ってしまった。
立ち読みしたら止まらなくなったの。
アマゾンでは一時的に在庫切れだ。
やっぱりヒグマが出没しつづけているせいかしら。この間は、子連れの母グマが自動車をぶんなぐってたしなあ。逃げたかったせいらしいけど。
この本は「ヒグマとの共存は人身事故の防止が前提」という観点のもと、ヒグマのありとあらゆることについて、冷静かつ精緻かつヒグマへのあふれる愛情をもって書かれた「ヒグマの総合事典」である。
章立ては、
1 人身事故とその対策
2 ヒグマとの共存策
3 進化と分布
4 身体と生態
5 アイヌ民族とヒグマ
第1章「人身事故とその対策」を熟読しただけでも、役に立つ情報がいっぱいである。
ヒトを襲う熊の存在率は2000分の1。
ヒグマがヒトを襲う原因は
食害(食べる)
排除(ヒトを追い払いたい)
戯れ(!)・苛立ち
ちなみに「戯れ」が原因と思われるものは3例あり、いずれも生還しているのだが、撃退した方法の一つが「口に手をつっこむ」だった。「食害」目的で武器を携帯していない場合は生還率ゼロ、「排除」目的の場合は確率半々。しかし、ヒグマの目的ってわかるものなのかしら。
「不幸にしてもし万が一ヒグマに遭遇した場合は、勇猛心を奮い立たせて絶対に気合い負けせず、ヒグマからできる限り離れることを念頭におき、次の方法をなす」(以下要約引用)。
第一段階
ヒグマの様子を窺いつつ静かにヒグマから離れること。背を見せたり走って逃げては絶対駄目である。走って逃げると必ず襲ってくることを念頭におくこと。そして、普通の音声か少し高い音声で何でもいいからヒグマに話しかける(!)。そして、クマの通路を自分が邪魔していることもあるので、話しかけながらゆっくり退去し、横に避けてみる。第二段階
なおもヒグマが接近してきたら、間を与えつつ大声で一進一退しながら少しずつヒグマから離れる。持ち物があればそれを少しずつ、なければチリ紙でもいいから2〜3枚丸めて唾や泥をつけたり、小石や小枝でも拾って、クマのほうに投げて気をそらす。第三段階
それでもなお執拗に接近してくるようならば、これはヒトを目当てと考え、格闘することを決意すべきである。鉈があれば言うことはないが、なければ棒切れでも小石でも拾い持ち、大声でクマを威嚇しながら立木などを挟んでクマと対峙する。第四段階
そして、ヒグマが襲ってきたら、ひるまず反撃し、鉈でヒグマのどの部分でもいいから叩きつけること。鉈で叩きつけるとクマもひるんで逃げるものである。現状では、これ以外に襲ってくるヒグマを撃退する有効な方法はない。いずれにしても、一般人を襲うヒグマはごくまれにしかいない。
詳細かつ具体的なインストラクションである。「ヒグマに話しかける」なら自分にもできそうな気がする。犬には話しかけるからな。
このあと、実際に襲われてヒグマを撃退した具体例がたくさん紹介されたり、ヒグマの生態がくわしーく解説されたりするのだが、食性とか行動範囲とか、参考になる。あちらこちらにヒグマ目線が感じられるのがほほえましい。
写真につけられたキャプションが「人に遭遇して不快感を示すヒグマ」だったり。
ヒグマは知れば恐るるに足らずという気がしてきたぞ。
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コメント
これは、私が以前図書館の放出本として入手した1冊の増補改訂版では! さすが名著は改訂されてどんどん読み継がれていくべきものですね。
「格闘することを決意する」シチュエーションにさえならなければ、話しかけるくらいなら私もできるかも(自信はない)。よほどのことがない限りは襲ってこないのではないかとは思っています。クマ側も怖いだろうし。
それにしても、キャプションが冴えてる!「不快感を示すヒグマ」って。
投稿: 春巻 | 2011.10.26 23:50
お返事が遅くなりました。
ああ、あの本!そういえば、入手してましたね。
いや、この本は名著だと思います。
「死亡事故については旧版で詳しく書いた」というような記述があったので、かなり増補改訂がされているらしい。
つらつら読むと、やっぱりクマも怖いみたいです。
件のキャプションがついた写真のクマは確かに不快そうでした。
投稿: きたきつね | 2011.10.30 22:31