「グレン・グールド—天才ピアニストの愛と孤独—」
今年映画館で観た映画2本目。見たのは先々週なので、下書きしてあったのを急いでアップ。
本来の予定より1週間上映が延びたので、走って見に行った。シアターキノさん、ありがとう。
原題は、"Genius Within: The Inner Life of Glenn Gould"。グレン・グールドの生涯を、証言と音楽(当然演奏は全編グレン・グールド)で綴った映画である。
グレン・グールドのおっちゃんとのつきあいは古い。なぜか家にあったモーツァルトのソナタのCDを聞いていたある夜、だれもいないはずなのに人の声が聞こえて、すわ心霊現象かと思ったところが、「このおっちゃん歌ってるよ…」と気がついて以来、ずっとずっと聴き続けていて、バッハとか手に入る曲はほとんどグールド盤で、あまりにも日常的な存在なので、自分の中ではアーノンクールと並んで「おっちゃん」呼ばわりするポジションを確立している。
世間的には変人呼ばわりされているらしいということは、かつて「カナダには有名人いないし」と言う知り合いのカナダ人に「グレン・グールドがいるじゃん!」と(心からの好意で)言ったところ、なんとなくむっとされて以来、うすうすは感じていた。
映画でも冒頭から「変人」「ハンサム」と言われてましたな。
なるほど、言われてみればハンサムかもしれん。
あまり考えたことはなかったが。
変人というのもなあ、邪心というものは一切ないし、したくないことは金輪際したくない人だとは思うけど、しかし晩年のエピソードを聞くと、やっぱりそうなのかな。
何より驚いたのは、
おっちゃん、彼女いたんかい!
ということだった。
いや、若いころなら驚かないけど、尊敬していた音楽家の奥さんと子供もろとも同居していた、とか、当初は良好な関係だったのが偏執的な束縛のあまり彼女が夫のもとに戻ってから、ソプラノ歌手と特別な関係になっていたとか。
いや、しかし、もてるかもしらん。うん。
純粋な人ではあったのだろうし。引退後の夢が「島で『子犬牧場』(と字幕にあった)を開く」ことだし。犬好きだったよなあ。
数は少なかったかもしれないけど、友達にも恵まれたと思う。よかったね、おっちゃん。
全編に流れ続けるおっちゃんの音楽は、あいかわらず素晴らしく、うっとりである。
おっちゃんを知ったときには既に没後だったのだが、今年はちょうど没後30年になるのだなあ。生きていれば80歳なのだなあ。もし今生きていたら、きっと喜々としてパソコンとか新しいテクノロジーを使っていただろうなあ。たしか、おっちゃんを知ったのは没後1年ぐらいだったので、すでに30年近くつきあっているのか。
評価がどうであれ、自分の葬式には81年版の「ゴールドベルグ変奏曲」を流してほしいという気持ちは今も変わらない。
おっちゃん、素晴らしい音楽をありがとうね。
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