「桃姐(桃さんのしあわせ)」日本語字幕版
香港で一度見ているのだが、日本語字幕版が公開されたので、万障繰り合わせてシアター・キノに走って見に行った。札幌で公開されてよかったなー。
日本版予告編。
これ、ナレーションは加賀美アナウンサーじゃ。
一度見ているとはいえ、いい塩梅に細かいところを忘れていた。
一番忘れていたのは、食べ物である。
朝から(だよね)野菜・蟹・スープ・蒸魚!蒸魚には白ご飯だろと思ったら、ちゃんと後から登場。ロジャーの幸せものめ。茶餐廳で蒸魚を食べる場面でも白ご飯を頼んでいて(注文の仕方がわかってよかった)やっぱり蒸魚には白飯がつきものなのねと思う。
それから、牛舌(香港では「牛(月利)」ということが香港版DVDでわかった。これで香港でも牛舌が食べられる)はにんにくと生姜と葱と八角とクローブで煮る。途中、そういえばあの牛舌はどうなったのだろう…と心配していたら、ちゃんと登場して胸をなで下ろした。
燕の巣は生姜を入れて煮るんだな。遠慮なく突っ込む桃姐は料理が上手なんだなあ。遠慮なく突っ込める関係もいいな。
それにしても、「糖水」は「砂糖水」ではあるまい。あのスープ入れに入っていたのは、紅豆沙だろうか緑豆沙だろうか白木耳の煮たのだろうか。
見ていると、スープ入れは香港では必需品なのであって、桃姐の最初の入院のとき後ろのベッドにはスープ入れが並んでましたな。あの場面では「手が不自由なんだから食べられないだろ、手伝えよロジャー!」と思ったが、最初は洗濯機の説明書を玩味熟読するぐらい何もできなかったロジャーが、だんだんいろいろなことができるようになっていくことを見せていたのだと思う。
けっして華美ではないのだけれど丁寧に暮らしているという雰囲気が満載のアパートも好ましかった。
見直してみると、ゲストがやっぱり豪華で、のっけから出てくる大導演ツイ・ハーク&サモ・ハン!笑った。秋生さん(マニキュアしてたよね)が出てくると手を振ってしまう。考えてみると、この2人は同じ年なんだよね、たしか(「無間道」では上司と部下だったけど)。首映のシーンもやっぱり豪華。しかし、帰り道に桃姐が「あなたがスターじゃなくてよかった」という台詞に「いやいやいや」と突っ込んだのは自分だけではあるまい。あなたがスターじゃなかったら誰がスターだ。それにしても、林家棟、どこに出てきてたんだろ。
もうひとつの個人的な見どころは猫のカカちゃんだったのだが、カカちゃんは本当にデニー・イップが好きだったと思う。尻尾がぱたぱたしてた。
ストーリーはわかっていたので、最初から香港人必携Tempoを握りしめていたのだが、泣けたのは、たとえばロジャーの同級生が桃姐に電話をかけるシーンだったり、桃姐とロジャーが持ち物を整理するシーンだったり、すっかり年老いてしまった「校長」が風景をバックに漢詩を吟じるシーンだったり。
病も老いも誰にでも来ることで、見送るのも誰もがしなければならないことで、もし間に合わなかったら…という可能性を考えつつも仕事に行かなければならないこともあって。時間はあっという間に経つもので。
アン・ホイ監督は本当にうまいなあ。
金像奨総なめは当然といえよう。
日本版ブルーレイが出たら(出るよね?)買う所存である。
来週、香港に行ったら焼鵞河粉を食べよう。
桃姐は幸せだったと思う。
【追記】
大スターを修理工やタクシーの運転手に間違えさせしめたファッションはこのように決まったのかという動画がこちらに。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント