「Life of Pi (ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日)」の主役はイルファン・カーンだと思う
ただいま全国で上映中。
見に行ったのは、ひとえに「うちのイルファン・カーン」が出ているからである。なぜなら、イルファンはインド映画においてもっとも好きな俳優だから。
イルファン・カーンはインドの名優である。英米圏の映画に最も出ているインド俳優と言っていいと思う。最も有名なのは「スラムドッグ・ミリオネア」の強面刑事(しかしエンドタイトルではいい人そうに描いてある)であろう。「その名にちなんで」の主人公の父親役もとってもいい役だ(ちなみに妻役は今回主人公の母役だったタッブー。3月16日公開「Om Shanti Om」の「Dewangee Dewangee」の赤いサリーの美女です)。「マイティ・ハート」の頼りがいありまくりのパキスタンの軍人役ははまり役である(刑事や軍人の役がとっても多い)。「ダージリン急行」の子供をなくしたお父ちゃん役は台詞がひとつもないけどいい役だった。「New York, I love you(ニューヨーク、アイラブユー)」ではナタリー・ポートマンに惚れられる(当然だ)役。あ、まだ見ていないのだが「アメージング・スパイダーマン」の悪役もやってた(詳しくはこちらに)。
インド映画にもたーくさん出ているが、個人的に一番好きなのは「Life in a Metro」。本家の「フォーン・ブース」よりずっといい「Knock Out」もイルファンの演技力があってこそ(共演のサンジャイ・ダット兄貴もいいけどね)。「ユージュアル・サスペクツ」翻案の「Chocolate」もいいです。イルファンのIMDbはこちら。
イルファンの声は特徴があって、高めでちょっとかすれ気味の癒し系なのだが、今回の「Life of Pi (パイの物語)」が始まるや否やこの声が聞こえて鼻血が出そうになった。オープニングタイトルではクレジットの2番目で名前が出るや音が出ないように大拍手、登場したところで思いっきりスクリーンに手を振ってしまった。
予告編。
ナレーションの声はイルファンです!
この映画はイルファンの語りで進む。訪ねてきた小説家に自分の体験を語るのである。インドで経営していた動物園を畳んでカナダに移民することを決めた父親とともに家族も移住したのだが船が難破、主人公のパイは虎のリチャード・パーカーと共に227日間漂流するはめになる。
イルファンが語っているということは主人公は生き延びたことがわかっているわけで、どのようにその体験が語られるかというのが肝。
予告編には出てこないけど過去を語るイルファンはこんな感じ。髪長め。
申し遅れましたが監督はアン・リー。いつもなら最初に述べるのだが、当然好きな監督さんだけど、すみません、今回はイルファンが最優先です。
何かのインタビューで「3Dだから撮った」とアン・リー監督が語っていたのを読んだ記憶があるのだが、3Dはどうも苦手なので2Dで見た。2Dでも、このあたりが立体的になるのだなあと想像はついた。鏡のように空を映す海や荒れ狂う海、いろいろな宗教にはまって神を信じる主人公、「トラ」との共存を撮りたかったのかなあ。
なぜ主人公に髭が生えないんだろう?とか、シマウマやオランウータンやハイエナは骨までなくなったんだろうか?とか、ミーアキャットが土筆のようにたくさんいるとは生態系はどうなってるんだとか、いろいろ疑問はあるが、まあそういうことなんだろう。
英語版の予告編(ナレーションなし)。IMDbはこちら。
トラはねー、一度もふもふしてみたいなあ(無理だとは思うけど)。
本筋とは関係ないけど劇中のインド料理(イルファンが作る!ベジのカレー&チャパティや、お父さんの食べるラムカレー、お母さんの作るステンレスのお皿に乗ったカレーの数々)がとっても美味しそうだった。
あの船は日本籍という設定なのだが、船名は「対馬丸」か何かの間違いだとは思うのだが、書類や救命胴衣の日本語がちゃんとしていてよかった。
クレジットは二番目だけど実質的な主役はイルファンだと思う。イルファンの語りで話が進むし。この語りに説得力がなければ映画は成立しない。よくぞキャスティングしたと思う。
全国の映画館でイルファンがアップになり声が流れまくっていると思うと嬉しくてたまらない。
「Life of Pi」はアカデミー賞にノミネートされているので、「スラムドッグ・ミリオネア」に続き、イルファンが授賞式に来るといいな。録画しよっと(余談だが、何が悔やまれるといって「スラムドッグ・ミリオネア」が受賞したときの録画を消してしまったことである。客席とか作品賞でみんなでステージに上がったときとかたくさん映っていたのに)。
この映画でイルファン・カーンを知った皆さま、大人になったパイ役でナレーションをやっているのはイルファン・カーンというインドの名優です。機会があったら、「その名にちなんで」「スラムドッグ・ミリオネア」「マイティ・ハート」「ニューヨーク、アイラブユー」「アメイジング・スパイダーマン」「ダージリン急行」はレンタルがあるので是非見てください。そして、機会があったらインド映画も是非是非見てほしい!と心から願うのであります。
【追記】イルファンのインタビュー動画(英語)発見。興味深い。
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コメント
きたきつねさんの感想、楽しみにしていました。
そうなんです。
この作品はイルファンあっての「ライフ・オブ・パイ」なんです!(きっぱり)
アン・リー監督の目は確かでしたね。
(だからこそ、パンフレットの内のインタビューが謎なのですが)
パイのひげはあたしも気になりました。
あと、はじめのほうのヤギ…。
「マイティ・ハート」は見てませんでした。
早速見てみます。
ありがとうございます。
投稿: やっほー | 2013.02.10 07:03
早速のコメント、ありがとうございます。
いや、ひいき目を抜きにしても、この映画はイルファンなしでは成立しないと思います。主役の若い頃のパイは他の役者でもかまいませんけど。
インド人も香港や台湾の映画の俳優は知らないでしょうから、アン・リーが名前を知らないのもある意味しようがないかという気がします。「スラムドッグ・ミリオネア」の起用を見ると、インドの著名俳優で英米圏の映画に出ているのはイルファン・カーンとアニル・カプール(「24ファイナルシーズン」で大統領役)あたりかという感じですし。
結果的に、イルファン起用は大正解で、これ以上の適役はいなかったと確信します。アン・リー監督はラッキーです。
しかし、やっほーさんにはインド映画こそお勧めしたい!「Chocolate」も「Knockout」もオリジナルより絶対面白いです。「Life in a Metro」(個人的インド映画ベストワン)ではイルファンはフィルムフェアの助演男優賞を獲っています。
投稿: きたきつね | 2013.02.10 12:30