« 「あまちゃん」後半戦に | トップページ | 映画でイルファンを補給する:「アメージング・スパイダーマン」「Maqbool」など »

「10人の泥棒たち」(九龍城の緑の唐楼を惜しむ)

 字幕版を見るなら今日しかないことに上映1時間半前に気づいて走って行った。間に合ってよかったよかった。

 日本版予告編。吹き替え重視なのね。

 韓国映画である。
 韓国の泥棒チームがマカオでダイヤを盗むという大仕事を受け、香港の泥棒チームと一緒に仕事をすることになるという話。10人の内訳は、韓国チーム4人、香港チーム4人、元締めの韓国人マカオ・パク(キム・ユンソク)、マカオ・パクと因縁のある女性ペプシ(キム・ヘス)。香港チームのメンバーは、チャン(ヤムヤムことサイモン・ヤム)、ジュリー(アンジェリカ・リー)、ジョニー(デレク・ツァン)、中国語(普通話)ができる韓国人という設定のアンドリュー(オ・ダルス)。主要舞台は香港とマカオである。
 冒頭、韓国チームが美術品窃盗を行うところから始まり、アクションその他なかなかがんばっていたのだが、惜しむらくは、話が盛り込みすぎで散らばってしまい、何が本筋かが見えにくくなってしまった。最初は、韓国チーム中心でイェニコール(チョン・ジヒョン)が主役、華麗な泥棒技を見せるのかと思っていたのだが、どうにもイェニコールには感情移入できず。マカオ・パクとペプシの因縁の話なのか、恋愛話なのか、謎の中国人ウェン・ホンとの確執なのか、ダイヤの行方が中心なのか、香港警察も書きたいのかがはっきりせず。どれもありにしたいにしても、話の筋はもうちょっときっちり通した方がいいと思うぞ。最終的にはマカオ・パクとペプシが主役らしく、話は最初の伏線を回収しつつ落ち着くのだが、もっとコンパクトにまとめられたと思う。
 もちろん、いいところもいろいろあって、たとえば、言語状況がとても面白かった。使用言語が韓国語と普通語と広東語と日本語が混じっていて、韓国チームと香港チームは基本的に言語を共有しておらず、マカオ・パクとアンドリューは普通語ができるので香港チームとは普通語でコミュニケーションしているのだが、香港チームの内輪の話は広東語で、相手にわからないよう広東語で話すシーンがあるとか、お互いの言語がわからないと共通言語は日本語になっちゃうとか(ヤムヤムが日本語を喋る)。まあ片言だろうと何だろうと大切なのは通じることだ。言葉って大事だなあ。
 公式サイトを見ると、吹き替え上映をフィーチャーしているようなのだが、吹き替えたら、これ、どうするんだろ。言語が違うことで表現されているところがかなりあるので、吹き替えると困るんじゃないだろうか。

 実は、何よりも魅力的だったのは香港の風景であった。
 香港とマカオの場面では、もっぱら背景ばっかり見ていて、ヤムヤムがでてきたときも、初っぱなに香港が映ったときも思わず画面に手を振ってしまったのだが、香港のメインのロケ地が、「心のご近所」であるところの

  九龍城!

 なんである。
 背景の唐楼に高層建築が混じっているのが九龍城のようだとは思ったのだが、ロケ地がわかってしまった。
 外を写すシーンで、

2013012920101224

 ここのネオンがしょっちゅう映っているのである。
 こちらの記事に書いたのだが、もうなくなってしまった龍寶酒楼。啓徳空港ありしころは上空を飛行機が通り過ぎる写真によく出ていた場所。
 バルコニーや屋上の装飾から考えて、ロケ地はおそらく

20130129hongkong1_20101226

 ここだと思う。
 獅子石道の角のところにあった緑色の古い唐楼。とても好きな建物だった。上の記事にも書いたように、この建物も既に亡い。
 龍寶酒楼のネオンがついているということは、撮影はかなり前なのだが、いつ撮ったのだろう。室内はセットかもしれないけど、かなり香港らしい内装だったので、あの建物だったらいいな。
 もうなくなってしまったけれど、フィルムに姿を留めることができてよかった。涙が出そうになりました。

【追記】
 メイキング動画を発見。やっぱりあの建物だ(泣)。

 メイキングとしてではなく香港動画として見てしまう。
 住民が退去してから撮ったのだろうか。
 残しておいてほしかった、と心から思う。

【2013年10月さらに追記】
 背景の香港を見たいがためだけにブルーレイを買ってしまった。最後に出てくるホテルはホンハムのハーバープラザだったのか。觀塘か九龍城のフェリーピアとその前のバスターミナルも出てた。
 何より、あの唐楼がきれいな映像で見られたのがよかった。
 特典映像には上の動画は入っていなかったけど、悔いはござらん。

|

« 「あまちゃん」後半戦に | トップページ | 映画でイルファンを補給する:「アメージング・スパイダーマン」「Maqbool」など »

コメント

『10人の泥棒たち』、みてないのですが、やはり観た方がよさそうですね。あの建物を見るだけでも。とはいえ、貼ってくださったメイキングだけでかなり満足してしまいました。映画での内部はセットのようですが、メイキングでは、建物内からみた街の光景があって、おお!と思いました。
そして、龍寶酒楼。この前まで行ったことあるのですが、そんな貴重な建物がここにあったとは認識しておらず。チェックもれが悔やまれます。
樂口福は、政府の歴史建築の三級かなんかになってはいましたが、それでも、まわりの様子をみると油断できないなと思います。
7月に行くので、このあたりも見てきたいと思います。

投稿: ゆずきり | 2013.07.01 06:08

あの建物、映画では屋上などもう少し出てきます。外に出てくるシーンで実際の内部も少し映っていた気がする。大好きな建物で、屋上の星の装飾とか、普通の唐楼とは少し違っていたこともあって、何とかして残してほしかったなあと思います。
香港・マカオのシーンは背景ばっかり見ていました(あとヤムヤムも)。
樂口福は隣が高層マンションになってしまったので、本当に心配です。街市の回りの古い建物も。
7月にいらっしゃるんですね。是非見てきてください。觀糖も(その後どうなっちゃったんだろう…)。

投稿: きたきつね | 2013.07.01 10:24

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「10人の泥棒たち」(九龍城の緑の唐楼を惜しむ):

« 「あまちゃん」後半戦に | トップページ | 映画でイルファンを補給する:「アメージング・スパイダーマン」「Maqbool」など »