イルファン主演のお弁当映画『The Lunchbox』(2013)
まだ香港話は続くのだが、インド繋がりで割り込み。
いつもと違うところで買ったDVDが「劇場で撮影した」版で、画像があまり鮮明ではないうえに人の頭の影が時々映る。それで初めて知ったのは、上映前のインドの禁煙キャンペーンがすごいということ。劇中煙草を吸うシーンでは「煙草は有害です」というテロップが必ず出るし。
しかし、映画は、「うちの」イルファン・カーン主演のインド製お弁当映画で、たいそうよい作品だった。
予告編。
会社でクレーム処理担当保険会社で損害査定の仕事をしているサージャン(イルファン)はもうすぐ退職。妻を亡くしお昼ご飯は店に頼んで会社に届けてもらっている。一方、夫と娘と暮らす主婦のイラは、夫とコミュニケーションがうまくとれず寂しい。腕によりをかけてお弁当を作っても反応はいまひとつ。それもそのはず、お弁当はサージャンのもとに誤配されていたのだった。いつしかお弁当に手紙を入れた文通が始まり…というお話。
サージャンは毎日汽車に乗って家と会社を往復、家族はなく孤独な暮らし。一方のイラも、家事にあけくれ、夫とはあまり話せず、上の階のおばさんが主な話し相手。お弁当は、「お弁当運び」を生業とする人々(ダッバー・ワーラーとかいったと思う)が家に取りに来て会社に届けられる(お弁当箱は再び運び屋さんによって返ってくる)。イルファンは店に頼んでいるということは、運び屋さんが店に取りに来るというのもありなのだな。お弁当運びの人々は畳一畳まではいかないけどかなり大きい鉄製のケースに五段重ねのお弁当箱を並べ、頭に乗せたり自転車に乗ったりして各家をまわり、会社に行くときには汽車に乗るのであった。どうもお弁当運びの人々が固まっているエリアがあるようで、そこで皆さんは歌を歌っている。
インドのお弁当箱は、ステンレス製の五段重ねのきっちり閉まるタイプが主流のようなのだが、会社では、食堂にステンレスのお皿とスプーンなどが備えられていて、お弁当箱の中身をお皿に盛って食べるということを初めて知った。
イラの上の階のおばさんは、籠を窓から垂らしてイラとスパイスの貸し借りをしたりしている。おしゃべりはしょっちゅう。おばさんは姿は見えないのだが、おしゃべりでイラのことがよくわかるという作りになっている。
イラはお料理上手で、出てくる料理がことごとく美味そう。インゲンを炒めたようなのとか、茄子の料理がとりわけ美味そうだった。最初の手紙で、サージャンが「しょっぱい」とだけ書いたので、おばさんの入れ知恵で思いっきり辛い料理にしたら、イルファンはバナナを食べていました。料理があまり辛いとバナナを食べるのか、単に代用食なのか。
手紙には、だんだんお互いのことが書かれるようになり、サージャンもイラもお互いに楽しみになり、誤配がわかってもイラはお弁当をそのまま作り続け(夫には本来のサージャンのお弁当がいっているようで、アル・ゴビ(じゃがいもカレー)ばっかりらしい)、その手紙を通じて、2人のことが観客にもわかっていくのだった。
インドの、普通の人々の普通の暮らしが静かに丁寧に描かれていて、とてもよい映画だと思う。地味だけど。イルファンが普通の人をとてもうまく演じている(また、イルファンはスタイルがいいのよ。足が長くて)。
ちなみに、役名の「サージャン」は昔の同名映画『Saajan』(主演はマードゥリーとサルマンとサンジャイ兄貴)にかかっていて、劇中の歌が効果的に使われています。
『スタンリーのお弁当箱』もいいけど、これも公開してくれないかなあ。
【2014年1月30日追記】
日本公開が決定したそうです!!ついに!うちのイルファンが!インド映画で!主演で!しかもこの映画で!詳しくはこちらを。(感涙)
こちらに追加記事を書きました。
【2014年5月15日追記】
邦題は『めぐり逢わせのお弁当』とのこと。うーむ。
ちなみに、香港でのタイトルは『美味情書』。
香港で観たときの記事がこちらに。
【2014年8月16日追記】
ついに札幌で公開されました。記事はこちら。
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コメント
たしか、公開されるはずです。
どこかが「買った」という話を聞きました。
なので、きたきつねさんのレビューは劇場で見てから拝見させていただきますね。
公開の話を聞いたのでまだ買ってないんです。これのDVD。
おとなのお弁当箱はどんなかな?といまから楽しみです。
投稿: やっほー | 2014.01.13 22:59
うわー公開されるんですか!
シャールクでもサルマンでもアーミルでもない、うちのイルファン・カーンの主演映画が!
イルファンは、欧米の映画におそらく一番出ているインド俳優ですが、インド映画はなかなか公開されなかったので、う、うれしい…。
特にネタバレしてはいないのですが、ちょっと書き直します。
食べ物がとっても美味しそうで、カレー気分が盛り上がるので、DVDもお薦めです。劇場でも見たいけど、日本版ソフトが出るといいな。
投稿: きたきつね | 2014.01.14 13:20