『那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』
久々の陳果(フルーツ・チャン)の新作ということ以外に何の予備知識もなく観に行った。夜遅く見た方がよいというお薦めをいただいたのでiSQUAREで21:55の回に。
今回3本見たうちの3本目の映画。あとの2本は関連記事が書けそうなので、これを一番先に書くことにする。
ポスターはこんな。
予告編。
実は、タイトルとポスターを見た時点では、青春映画?と思ったのであるが全然ちがった。たしかに、こんな映画ではあった。今にして思えば、ホラー映画っぽいポスターではある。
予告編だとまとまって見えるなあ…というのは、映画評を見ると賛否両論真っ二つで、それも無理はなかろうと思ったからである。
陳果監督というと、『花火降る夏(去年的煙花特別多)』など「香港三部作」を思い出すのだが、この作品も香港ものには違いなく、りんご新聞のインタビューを見ると、登場人物17人のそれぞれに香港人を投影させているということらしい。ネット小説が原作なのか。
タイトル通り、深夜、旺角から大埔に向かう赤いミニバスに乗る17人のお話である。タイトルバックでキャストが全員写真入りで紹介されるのであるが、何といっても運転手が林雪!というところが個人的には大ヒット。林雪、『不忘了(忘れ得ぬ想い)』のラウちんとは違った意味で運転手似合いすぎ。いっそ頼もしくすらある。そのミニバス乗りたい。
だがしかし、このミニバスの人々には大変な運命が待っているのであった。着いた先の大埔には人っ子ひとりおらず、人々には不条理なことが次々に起こるのである。なぜそのようなことが起こるのかは一切説明がなく、人々が憶測と思い込みで突っ走るのがある意味とても怖い(なんで皆でそういうことをするのか?とか)。
ヤムヤムことサイモン・ヤムが髪型は変だけどリーダーシップを発揮してます。さすがに場数を踏んでいるだけのことはある(違)。林雪と2人で映っていると別の映画のようだ。サム・リーは久しぶりだなあ。クララ・ウェイお姐さまは後半もっと活躍してほしかったなあ。
ある意味投げっぱなしの作り方で、どこまでが監督の意図なのかはわからないけれども、個人的には嫌いではない。あとから「あれは暗喩だ」と聞かされると、実は全部に意味があったのかとも思うけど、しかし、あの人々が香港人の暗喩と言われるとかえって理に落ちてしまって面白くなくなるような気もする。「ツイン・ピークス」でも謎解きには興味がなく変な人々をエンジョイしてしまったせいかもしれないけど。謎が解き明かされないと納得しない人には評判悪かったろうとは思う。
デヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」がフィーチャーされていたのが嬉しかった。あと、茶餐廳の中以外は、おそらくロケではないかと思うのだが、出発点の旺角をはじめ、いろいろな香港が見られて嬉しい。誰もいないのはどうやって撮ったのだろう。ポストプロダクションだろうか。しかし、よく見ると遠景の建物の窓に明かりがついていたりするのだが、あれはまずくはなかったのだろうか。
これは、やっぱり、陳果の「香港もの」の1本なんだろうなあ。
見終わって夜の香港の街に出ると(幸せなことである)、街を歩く香港の人々に心温まる思いがしたのであった。
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