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『Mr. and Mrs. Iyer』(2002)

 「アーティスティックな映画が好きなら、これがいいぞ」と重慶マンションのお兄ちゃんに勧められた1本。

  20140614mr_and_mrs_iyer

 主演はラウール・ボースとコンコナ・セン・シャルマー。ラウール・ボースは目立たないけど、けっこう好き。物静かな渡辺謙みたいな感じ。2人とも演技が上手くて、コンコナは監督(ちなみに女性)の娘さんなのだが、血縁で出ているわけではないと思う。
 静かな映画で、ダンスシーンはないけど、音楽はよい。

 冒頭のタイトルバック。バスが山を下っていく。
 コンコナはタミル出身のビュア・ベジタリアンで、両親の住む北の山奥(森林管理官という仕事だかららしい)からカルカッタまで赤ん坊連れでバスで向かう。一人旅を心配した親が自然カメラマンのラウール・ボースによろしくお願いしますと頼み、バスは一路南下していく。
 冒頭はずーっとバスの中で、インドの長距離バスに乗っているような気持ちになる。グループで歌を歌う若者集団あり、持参のお弁当を食べるイスラム教徒の老夫婦あり、トランプをするおっちゃんあり、毛布をかぶっていちゃいちゃするカップルあり、障碍のある息子を連れた母あり、パキスタンに住む親族と離ればなれのシーク教徒のおっちゃんあり、乗客はいろいろ。
 バスはカルカッタまで4時間の道のりのはずだったが、しかし、途中でヒンディー教徒とイスラム教との衝突にぶつかり、戒厳令に巻き込まれてバスは足止めを食う。バスの中にイスラム教徒狩りのヒンディー教徒が乗り込んできたりして、コンコナとラウールはなりゆき上もあって夫婦として行動を共にすることになり…というお話。
 実は、ラウール・ボースの役はイスラム教徒で、名字がわかるとイスラム教徒とばれるらしい。その前に夫婦と勘違いされたこともあり、名前を聞かれてコンコナは自分の名字を名乗って夫婦ということにする。ラウールの仕事がらみで、足止めを食ったバスから下りて焼き討ちされた街に泊まることにし、地元の警官の好意でバンガローに泊まれることになるのだが、母語は通じないので英語で会話し、ヒンディー教徒でベジタリアンであるコンコナとイスラム教徒であるラウールとは習慣も合わず、しかし、赤ん坊連れで放り出されるとコンコナはにっちもさっちもいかなくなるのでラウールはコンコナを保護せざるを得ず。
 最初にインド国内のテロの記事が流れて、インドには18の言語と多様な宗教があることが紹介される。バスの中で、ユダヤ教徒がイスラム教徒を売るというくだりがあり、その理由が「自分がイスラム教徒と思われたら困るから」というものであったり(割礼の有無でチェックするらしい)、イスラム教徒狩りで名前を聞かれた乗客が「ブラーミンだ」と名乗るくだりがあって、カーストがあることも伺える。
 コンコナとラウールは英語で会話しているのだが、言語が通じないと共通語は英語になってしまうようで、まわりが不審な顔をしていないということは、夫婦でもそういうことはあるのだろうと思われる。
 様々な人々がいると言うことは軋轢を生むけれど、インドはその様々な人々が一緒になっている国なわけで、焼き討ちされたりして荒れ放題の戒厳令の街でコンコナとラウールがぶつかったり心が通ったりしていくのが静かに静かに描かれるのであった。
 いい映画で、国際的な賞を10ぐらい獲っているとのこと、そうだろうなあ。

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コメント

場違いなコメントでごめんなさい。でも、近々、こちらに来ることなんて、ありますか? もし、そうだったら、会いたいな〜。

投稿: koalaboke | 2014.06.22 18:50

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