『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』と『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』「あさイチ」で紹介される(日本でのインド映画の紹介について)
えらく長いタイトルだけど。ちょっと思うところがあったので。
7月11日のNHK「あさイチ」で『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』と『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』が紹介された。「あさイチ」といえば、朝の連続テレビ小説を有働由美子アナウンサーと井ノ原快彦が受けることで有名な、朝の情報番組随一の視聴率を誇る番組である。
ついにこんな日が…と感激しつつ、録画し生でも見てしまったのだが。
いえ、番組で紹介していただけるのは大変嬉しいのですけれども。
なんというか、紹介の仕方がですね。
『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』については、こちらに紹介記事を書いたのだが、大スター・シュリデヴィが演じるシャシが英語を学ぶことを通して誇りを取り戻していく素晴らしい映画なのだけれども、「あさイチ」での紹介の仕方が、英会話教室でシャシとフランス人のローランが出会って恋が芽生えることを伺わせるような作りになっていた。
あのー、この映画の主旨は「誇りを取り戻すこと」で、恋が芽生えるとかそんなのじゃありませんから!ローランに下心がなかったとは言い切れないけど、シャシはそんなんじゃないし、その紹介の仕方は映画の主旨に外れますから!
…と思ってしまったのだった。
一方の『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』は、DVDで見て、香港で見て、日本公開が決まって、既にさんざん記事にしていますが。
紹介された写真がイルファン・カーン演じるサージャンなしのイラだけのもので、紹介もイラが主人公で、孤独な主婦がお弁当と手紙を通じて恋に落ちていくという描き方なのである。
えーと。
わたくしがイルファン・カーンびいきであることを抜きにしても、この映画で軸足がどちらに置かれているかというと、イラではなくサージャンなのではないかと思うのです。
インド版予告編
香港版予告編
日本版予告編
日本版予告編は、インド版や香港版に比べて、イラの比率が高いというか、サージャンの比率が低いというか、イラに焦点が当たりすぎている気がする。だいたい、ナワーズッディン・シディッキーが出てこない。
妻を亡くした定年間近のサージャンの孤独、最初は人と交わろうとしなかったのが、イラのお弁当やお弁当が辛すぎたことが遠因でナワーズ演じる部下ともだんだん親しく交わっていき、ついには結婚式に親代わりに出ることになり、仏頂面だったのがだんだん明るくなって隣の席のおっちゃんにいぶかしがられるようになるという、サージャンの変化が、見どころのひとつじゃないんですか、この映画は。一方で、イラや上の階のおばさんやお母さんなど女性の大変さ、孤独ももちろん描かれていて、そこからイラも脱却していくところが見どころでしょう。この映画のポイントは、孤独と、人との関わりで孤独から脱却していくことなのでは。
「恋に落ちる」ことだけが映画の見どころじゃないと思うんですけど。
思うに、「あさイチ」の主な視聴者は家庭にいる女性で、日本でこの映画を見る層として想定されたのも女性なので、日本では女性向けにプロモーションをしているのではないか。で、「女性向けなら『女性が恋に落ちる』ことを強調するのがいいんじゃないの」という考え方が、宣伝サイドにある気がする。
それは、映画にも女性にも観客にも、とても失礼なことではないのだろうか。
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