最も日本公開してほしいインド映画は『Life in a Metro』(2007)である
札幌では『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』がたぶん今週いっぱい、『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』が1日1回で続映中。10月には『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』が公開される。シアターキノさん、いつもありがとうございます。
今年もインド映画が札幌ですら5本、東京ではもっと公開されていて(『Dabangg(ダバング大胆不敵)』は札幌にとうとう来ないのか…)、おそらく、次に何を公開するか、ということになっているのではないかと思う。
ヒットしている状況を考えると、どちらかというと、ばりばりのマサラ映画よりも、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』や『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』のような、文化を越えて心温まる路線のほうがニーズがありそうな気がする。
そこで、今、心の底からお薦めしたいのが、
『Life in a Metro』(2007)。
2009年に一度こちらで記事を書いているのだが、この機会に改めてご推薦。
この映画、監督もキャストもいいんです。
監督が『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』のアヌラーグ・バス。
主要キャストは、シェルパ・シェッティー(『Om Shanti Om』の「Deewangi Deewangi」のピンクのサリーの美女)、嫌な役をやらせたら右に出る者なし(でも嫌いじゃない)『ABCD』 出演のケイケイ・メノン、『3 idiots(きっと、うまくいく)』のラジュー役シャルマン・ジョシー、『Queen』の主演カングナ・ラーナウト、インド映画史上最大のヒット作(知り合いのインド人によると「見たことのないインド人はいない」そうだ)『Sholey』筆頭主演のダルメンドラ(サニー・デオルとボビー・デオルのお父さんでもある)、『Mr. and Mrs. Iyer』ほか出演作多数の演技派コンコナ・センシャルマー、そして、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』主演のうちのイルファン・カーン。
予告編。
6組のカップルの群像劇。舞台はムンバイ。
シェルパ・シェッティーとケイケイ・メノンは表面上は理想の夫婦を演じているがうまくいっていない。ケイケイ・メノンはカングナと不倫中。シャルマン・ジョシーはケイケイ・メノンの部下で、叔父から借りているマンションを上司の情事に貸し出して便宜をはかり昇進するのだが実はカングナが好き。カングナはコンコナ(シェルパ・シェッティーの妹)のルームメイト、コンコナはネットのお見合いサイトで知り合ったイルファンと最悪の出会いをするのだが一緒に働くことになり、ダルメンドラは昔の恋人であるナフィーサ・アリ(シェルパ・シェッティーの踊りの師匠)ともう一度やり直そうとしている。そして、シェルパ・シェッティーは演劇青年シャイニー・アフージャと恋に落ちる。
すなわち、シェルパ・シェッティーを中心に、夫婦、不倫、若者、あまり若くない人、若くなくなった人、片思い、婚活などなど、いろいろな愛の形が描かれているのである。
たとえば、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』でムンバイの普通の生活に興味を持った方には、また別の面からムンバイの普通の人々の生活が見られるし、インドだけではない、どこの国にもあるようないろいろな愛の形が描かれているという点では普遍性もあるので、面白く見てもらえると思う。監督がアヌラーグ・バスなので、描き方が暖かい。
音楽は、パクリ!と言われることもあるけどインドで賞を獲りまくっているプリータム。この映画は、ダンスシーンはないのだが、要所要所でどこからともなくバンドが現れて歌いストーリーを進めるというユニークな音楽の使い方をしている。
ギターを弾いている太め長髪髭面眼鏡がプリータム本人。
この映画は音楽もほんとによくて、サントラを買いました。
おそらく中心になるのは、シェルパ・シェッティーとシャイニー・アフージャのパートだと思うのだが、実はシャイニー・アフージャが苦手で(この人は後に事件を起こして映画界から消えたのであるが)このカップルにはあまり感情移入できず。しかし、他のパートはいいのである。もう後悔したくないダルメンドラたちは結婚していないので世間の風当たりが強く、カングナとシャルマン・ジョシーには何とか幸せになってほしいと思い、ケイケイ・メノンそこで泣くか!しかしシェルパ・シェッティーはどうして対応がそうなるか、などと思う。
そして、なんといってもコンコナとイルファンのパートが最高。
これはUTVの公式動画で、なぜか(たぶん『The Lunchbox』がらみだと思う)公開後7年経った今年に入ってから続々と公式動画がアップされているのであるが、UTVはこのシーンのことを「Funny clip」と言っている。
でも、ぜんぜんFunnyではありません。このシーンと直前のお買い物のシーンは大好きなのだが、終盤イルファンが白馬にうちまたがってムンバイの街を爆走しムンバイ駅に乱入するシークエンスは愛しているといっても過言ではない。
イルファンとコンコナはこの役でフィルムフェアアワードを受賞しました。
イルファン、こういう役も似合うのに、なかなかないのよね。
実は、この映画は個人的インド映画オールタイムベストなんである。
が、それを抜きにしても、とてもとてもよい映画なので、どのインド映画を公開しようかとお考え中の関係者の皆さんには、是非とも!日本公開を検討していただきたいと心からお願い申し上げる次第です。
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コメント
コンコナちゃんは、Me & Mrs Iyerをみました。彼女とイルファンなんてすてき!
ぜひ見てみたいです。
投稿: ゆずきり | 2014.09.23 20:13
コンコナもイルファンも上手くて出演作もたくさんあるのですが、この役が一番といってもいいと思います。
是非みてみてくださいませ!
投稿: きたきつね | 2014.09.23 21:03