カテゴリー「映画(インド)」の149件の記事

『インド映画完全ガイド マサラムービーから新感覚インド映画へ』

 ここしばらく、繁忙期だったり、この連休は家庭の事情で忙しかったり。
 しかし、この本のことは紹介しなければなりますまい。
 ついに出ました。届くや否や、嘗め回すように読んだ。

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 こちらに書いた『インド映画娯楽玉手箱』(キネマ旬報社)から15年、本当に久々に出たインド映画の本である。
 編集のご苦労については、こちらでかいま見ることができるのだが、書かれた以外のご苦労もたくさんあったと思う。
 本当に労作である。

 目次は、序章:いま、インド映画が来てる!、第1章:インド映画のここに注目!、第2章:インド映画のスター、第3章見ておきたいインド映画ベストセレクション、第4章:インド映画の全貌、第5章:インド映画の多様な要素、第6章:インド映画を知るためのデータと資料。合間に、「この未公開作品がすごい!」というコラムや、監修の松岡環さんが撮ったインドの映画にまつわる写真のページも。
 執筆は、監修の松岡環さんはじめ、編集が佐野亨さん・夏目深雪さん、執筆がアルカカットさんこと高倉嘉男さんなど、錚々たる方々が書いている。次郎丸章さんがお元気そうでよかった。松岡環さんとグレゴリ青山さんと次郎丸章さんは、1998年の『旅行人』インド映画特集でインド映画のことを教えていただいた(そしてそのコピーを握りしめて重慶マンションに初めて行った)ので大恩人なのであった。

 序章では、『きっと、うまくいく』『マダム・イン・ニューヨーク』『めぐり逢わせのお弁当』『女神は二度微笑む』が評論つきで紹介され、第1章では、『オーム・シャンティ・オーム』が「ソング&ダンス」、『ダバング』が「スターシステム」のように、最近公開されたインド映画(『DDLJ』は国立民族学博物館で公開されたけど、一般公開またはソフト発売はないのだろうか?)とインド映画の様々な側面が関係づけられて紹介されている。第4章では、「新感覚のインド映画の誕生」に始まり、「ヒンディー語映画」「マラーティー語映画のいま」「テルグ語映画のいま」「タミル語映画のいま」「カンナダ語映画のいま」「マラヤーラム語映画のいま」が紹介されている。ヒンディー語映画以外の言語のインド映画がちゃんと紹介された書籍は初めてではないかと思う。
 『3 idiots』が日本公開される前だったと思うのだが、『ムトゥ』を見ていた(らしい)ある映画評論家の方が、「有名な俳優が出ていない(アーミルもカリーナも大スターなんですけど!)」「歌も踊りもない(ありますけど!)」と『ムトゥ』と比べる形で評論を書いていて、タミル映画もヒンディー映画もまぜこぜで、自分の見たものだけで「インド映画らしさ」を論じていたこともあった(こちらに書いたのだが、周防正行監督も『インド待ち』で同じような書き方をしていてがっかりしたことがある)ことを考えると隔世の感がある。

 特に勉強になったのは、監修の松岡環さんが書かれている第6章「インド映画を知るためのデータと資料」で、恥ずかしながら、私、インドの州の名前はなんとなく聞いたことがあっても場所がちゃんとわかっていませんでした。インド映画の歴史と年表もとてもありがたい。インド映画はインドの大衆演劇から演目や様式を取り入れていたのでサイレント時代からミュージカルの萌芽があった(167ページ)のか。
 アルカカットさんの書かれた「インド映画の映画法とCBFCによる検閲」で、いつもインド映画の最初にばーん!と出る書類の意味が初めてわかりました。「宗教」の項で『OMG Oh My God !』(日本公開希望!)が紹介されていたのも嬉しかった。
 索引もばっちりあるし、「日本で公開されたインド映画リスト」や「日本でソフト化されたインド映画リスト」も大助かりである。数えてみたら、うちにある「日本語字幕のついたインド映画」は20世紀末から買い集めたものとテレビ放送を録画したもの(VHS録画で今は見られない『ラジュー出世する』(再ソフト化熱烈希望)を含む)を合わせて50本に達することがわかった。2010年以降のインド映画の日本公開数はやっぱりすごい!と思う。今後もっと増えてくれることを切に願う。
 
 編集がむずかしかっただろうなあと特に思ったのは「第2章:インド映画のスター」である。ベテランもがんばっていて若手も台頭している今日このごろ、誰を選びどのような順番で載せるかを決めるのは大変だったと思う。
 しかし、そうは思うんですけど、うちのイルファン・カーンが入っていなかったのは、心の底から残念であった。あと、リシ・カプールとかボーマン・イラーニとか、おっさんな人々は載せてほしかった…と思う。ナワーズも。
 塩田時敏さん(札幌出身だったのか!ゆうばりファンタでジョニー・トー監督のトークイベントの司会をしていたのはファンタの最初から関わってらしたからなのか)がインド映画のアクションについて書いてらっしゃるのだが、古くから香港映画のアクションが取り入れられているとか(『RA.ONE』では『少林サッカー』が思いっきり引用されているし)など、いろいろなものを積極的に取り入れていることに触れていただけると、もっとよかった。写真が入っていた『ダバング』のシーンは『マトリックス』だと思うし。
 2000年に出た『インド映画娯楽玉手箱』には、俳優だけではなく監督やスタッフを事典のような形でまとめたページがあって大変重宝したので、いつか、監督やバックグラウンドシンガーなどの特集が入った書籍を出版してくださると大変嬉しい。

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『Kahaani(女神は二度微笑む)』3度目とタゴールの詩

 結局、札幌での『Kahaani(女神は二度微笑む)』は3回行けた。
 せっかく1週間延長してくれて夜上映になったので1度は行かなければ、と行ってみたらば、平日夜にもかかわらず、半分ぐらい埋まっていたようで何より。
 音楽もよかったので、iTunesでサントラを何曲か買った。
 しかし、この曲がどこで使われていたのかが、よくわからなかった。

 個人的「バックグラウンドシンガーの帝王」Sukhwinder Singhが歌っている(「chaiyya chaiyya」とか「ちゃっくでー・インディア♪」とか、たいていの映画で「ここぞ!」というときに歌っている気がする。「スラムドッグ・ミリオネア」の「じゃえほ!」も)。いい曲だなあ。音楽は『Om Shanti Om』などもやっているヴィシャール&シャンカールだしな。

 で、3回日本語字幕で見たら「いい男じゃん、ラナ!」と思うようになった。もともとは強面が好きなんですけどね。スリランカとインドに住んでいた知り合いによると、ラナの顔はスリランカあたりではイケメンで、典型的なベンガル顔なんだそうです。
 ラナが一度だけ思わずヴィデイヤを名前で呼ぶところは、ぐっとくる。
 いや、もちろん、ナワーズも強面で素敵なんですけど。それにしても、短編『Bypass』では怖いぐらい強面だったうちのイルファンとナワーズを登用した『The Lunchbox(巡りあわせのお弁当)』はやっぱりすごい。
 そして、何と言っても、大アミターブ・バッチャンが歌うEkla Cholo Reが素晴らしくて、ある意味エンドロールを見るために見ているようなところもあったのだが、この歌詞がタゴールであると知って、詩集を入手した。

 そうしたら、元の詩はこんなだった(山室静 訳)

  もし彼らがお前の呼びかけに応じなくても、
  お前はひとりで歩いて行け
  もし彼らが怖がって声なく壁の前に立ちすくむとしても
  おお、運の悪い男よ
  お前の胸をひらいてひとりで語るがいい
  もし彼らが背を向けて、荒野を横ぎる時にお前を見捨てるとも
  おお、運の悪い男よ
  足の下に茨を踏みつけ、ひとりで血のしたたった道を旅して行け

  夜が嵐でどよめている時
  もし彼らが光を高く掲げないとしても
  おお、運のわるい男よ
  苦悩の雷火でお前自身の胸に火を点じて
  それをただ一つ燃えさせるがいい。

 映画の方は短縮版だったのか。
 もちろん、元の詩もいいけれども、松岡環さんの訳も好きだ。
 日本版ソフトは出ると思うので、字幕付きで繰り返し聞けるのが楽しみ。

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日本公開希望!『Gunday』(2014)

 ずっと見ていなかったこともあり、インド映画強化中。『Kahaani(女神は二度微笑む)』に続き、ドゥルガ神のお祭り前後のコルカタが舞台。
 主演は、ランヴィール・シン、アルジュン・カプール、プリヤンカ・チョープラー、そして、うちのイルファン・カーン

 予告編。


 
 ナレーションはイルファンです!
 バングラデシュがインドから独立し、混乱の中取り残された孤児のビクラムとバラは、石炭横流しのアウトローとして生き延び、インドに渡ってコルカタでのし上がる。ドゥルガ神の祭りの3週間前、2人を捕らえるべく、コルカタの警察にイルファン・カーン演じる刑事がやってくる(このあたり、ちょっと『Kahaani』のナワーズっぽい)。一方、ビクラムとバラは、クラブ「カルカッタ」オープンのテープカットに招かれ、プリヤンカ様に一目惚れするのであった。
 子ども時代のビクラムとバラがインドに渡るまでが一渡り描かれ、おもむろにタイトルが出る(タイトルバックはこの曲)。展開はとってもわかりやすいのだが、どうなるのか目が離せない。
 そして、歌舞音曲シーンが「インド映画」らしい、と思う。
 色鮮やかなこれとか。

 ステージの踊りに妄想が混じるとかね。こちらは、かつてのインド映画に必ず1曲はあった感じ。目下、ソングチャプターをヘビロテ中である。
 バングラデシュ独立が背後にあり(「2つに引き裂かれる」というのがキーワードのひとつ)、「石炭が白く見えるほど」とか「石炭の中のダイヤモンド」とか、石炭も初めから終わりまで貫かれているテーマのひとつで、とても首尾一貫している。
 基本的にシリアスな話なんだけど、コミカルなところもきちんとあって、プリヤンカ様に初めて会ったときのランヴィールとアルジュンがぷるぷると首を振るところは大変かわいらしかった。あ、でも、シリアスというよりはアクション映画に分類されるかもしれない。鳩が出てくるところと爆薬の使いっぷりで「ジョン・ウーかよ!」と思った。そして何より、薄い本ができちゃいそうなバディものであるところが最大の売りであろう。
 子どものころは、バラは腕力派・ビクラムは頭脳派と描き分けられていたのだが、大人になってからは、ランヴィールとアルジュンのどっちがどっちか、ちょっと混乱した。最初は逆かと思ったわ。まあ、展開を考えるとそういう配役になるのであろう。
 そして、うちのイルファンは、今まで数々の警官・軍人役を演じてきた中でも屈指のかっこよさであります。出てくると手を振ってしまうのはもちろんだが、「隣に座っていた」シーンでは、思わず「きゃー!」と叫んでしまった(自宅なので問題なし)。
 「Law」か「Out of Law」かもテーマなんだろうなあ。
 邦題は『アウトロー』がいいと思う。日本公開されると大変嬉しい。

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『Shaadi Ke Side Effects(結婚の裏側)』(2014)

 『Kahaani(女神は二度微笑む)』の札幌での上映が5月15日まで延び、しかも夜上映になったことを寿ぎ(シアターキノさん、ありがとうございます!これで平日も行けるというものです)、DVDを片付けがてらプチ・ヴィディヤ祭りを開催。
 たしか、この映画は『結婚の裏側』の邦題で映画祭上映されたと思う。
 主演は、ヴィディヤ・バランと、天は二物以上与えているんだなあといつも思う(『ミルカ』の主演で『Don』の監督で『Rock on !』ではミュージシャンだしねえ)ファルハン・アクタル。

 予告編。

 ヴィディヤとファルハンは夫婦役で、ファルハンはミュージシャン。
 音楽はプリータム、音楽提供はT-Series。

 T-Seriesって、そうやってミュージシャンを探しているのか!というくだりがあり、まるでメタフィクションのようだった。
 タイトルからコメディかと思っていたら、ほろ苦さの方が勝っていた印象。
 ミュージシャン(住んでいるところから判断して売れていると思う)のファルハンとキャリアウーマンのヴィディヤに子どもができて、ファルハンは気が進まなかったけれどもヴィディヤはどんどん母親になっていき家庭に居場所がなくなった気持ちのファルハンは…というお話。
 終始ファルハン目線で話が進むのだが、自分の気持ちやプライドが最優先で、子どもを可愛いと思わなかったのかなあ…というのが疑問であった。まあ、子ども最優先のヴィディヤを淋しく思うのもわからないではないのだが、どのぐらい普遍性のある話かわからない。
 それにしても、ヴィディヤ、それは博打を打ちすぎでしょう!とか。これから大丈夫なのかよ、とか、あまりハッピーエンド感がなかった気がする。観る人の性別や年齢で感想が違うかもしれない。

 あと、これを見て「Dil To Pagal Hai」(今でも好きな映画なんである(詳しくはこちらを)。いつか日本で「シャールク名作まつり」が開催されたら、是非日本で公開してほしいと思う。けっこう盛り上がると思うんですよ「シャールク名作まつり」、いかがでしょう関係者の皆さま)を思い出したのだが、90年代のインド映画のロケはヨーロッパと相場が決まっていたけど、今はオーストラリアなんだなあとか、題材が「恋が成就するまで」じゃなく「結婚してから」なんだなあ、など、時代の変化を感じたことであった。

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『Dabangg(ダバング大胆不敵)』を日本語字幕で観る

 ついに来ました。
 『Dabangg(ダバング大胆不敵)』日本版DVDが。

 「日本で公開してほしい!」と書いたのは、2011年10月。2014年2月に日本公開されたものの結局札幌には来ず、ソフトも出ないのではという噂を聞いていたのだが、晴れて観られる日が来てなによりであった。
 日本ではDVDしか出なかったけど、出ないよりは遙かにいい。ミュージカル・チャプターがついているのも偉い。
 連休をいいことに早速観た。歌詞にも字幕があって、ありがたいのだが。
 日本語字幕だと、かなり印象が違うぞ。

 たとえば、

 酔っ払いのおっさんの大集団に囲まれたソナクシちゃんの心境は、いかばかりであろうかとか。しかも、これ、警察署なんだよね。どうなのよインドの警察。

 あるいは、

 これって実は映画ネタの曲で、インドではスタイルがいいのはシェルパ・シェッティで、色香があるのはカリーナ・カプールなのか、とか、大アミターブ・バッチャンは「背の高い大俳優」なのか、とか。

 ストーリーも、弟の結婚式を乗っ取るとか、ちょっとそれはひどいでしょうよ、サルマン。まあ、弟役は実の弟でしかも映画のプロデューサーで、ついでに書くと上で踊っているマライカ・アローラ・カーンの実の夫君だけど。
 ソヌ・スードが乗り込んできて最初に言うことは、いちいちもっともで、まあ、ソヌさん(俳優としては、けっこう好き)がサルマンに輪を掛けて悪党で、弟が利用されたことに気がつき母の死の真相を知ったことが、家族の和解と大団円につながっていったわけで、サルマン・カーンがヒーローというのは、けっこう危ういバランスの上に成り立っていたんだなあと思う。一歩間違ったら悪徳警官で終わるよね。
 ソナクシちゃん、よく結婚したよなあ。

 まあ、サルマンがベタ惚れで、ソナクシちゃんが矯正したところもあるんだろうけれども。それにしても、この曲は、ソナクシちゃんの壺作りとは思えない美しい服装がみどころである。普通の人はパンジャビ・ドレスが多くて、それはそれで着こなしの参考になる。

 そして、この映画は、乗りがやっぱりショウプラザーズ映画、なかんずく張徹映画である。監督はけっこう香港映画を見ていると思う。

 それにしても、気になるのは、昨年はインド映画の日本公開がとても多くて、ソフトもどんどん発売されているのだが、今年の公開数が昨年に比べて少ないように思えること。
 自分自身も昨年から今年にかけての新作はあまりカバーできていないんだけど、『Queen』とか『ABCD』とか『Goliyon Ki Raasleela Ram-leela』(ランヴィール・シンの踊りで文字通りご婦人が倒れるんですよ)とか、是非とも今年も続けて公開数を増やしていただきたい!と心から願うのであった。

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『Kahaani(女神は二度微笑む)』を札幌で観る

 4月25日より札幌公開。シアターキノさん、いつもありがとうございます。
 お休みになって、やっと観に行くことができた。
 客席が暗くなるや否や、泣いた。なぜなら、

  超満席だったから。

 それほど収容人数は多くなかったのだが、通路まで補助椅子が出て人がびっしり。インド映画が、こんなにぎっしりの劇場で一般公開されたのを初めて見た。
 よかった。ほんとうによかった。
 そして、これを劇場で初めてみる方が心から羨ましかった。
 公開されると思わず、DVDで観てしまっていたから(記事はこちら。ネタバレなし)。

 日本版予告編。

 日本語字幕は松岡環さん。名前が出て小さく拍手した。
 いつも書いていますが、日本語字幕で見られるってなんて幸せ。特に、歌の歌詞がちゃんとわかることがすばらしい。

 とりわけ、大アミターブ・バッチャンが歌っているこれ。
 パンフレット(当然買った)で知ったのだが、タゴールの詩で、ベンガルではみんなが知っている歌だとのこと(好きなプレイバックシンガーであるシュレヤ・ゴーシャルもこの映画の前に既に歌っている)。エンドタイトルにも出てくる。泣ける。
 大アミターブ・バッチャンは、ナレーションもやっていて。そのナレーションが出てくるや、心の中で大拍手。冒頭のspecial thanksで既に拍手してたけど。
 ナワーズには出てくるたびに小さく手を振ってしまう。ああかっこいい。
 ヴィディヤも、これは、カトリーナにもカリーナにもできない、ヴィディヤでなければできない役で、フィルムフェア・アワードはじめ主演女優賞を総なめにしたのも当然の演技であった。
 「ここでは名前が2つある」「名前で呼ぶことの意味」の使われ方もいい。ラナが一度だけヴィディヤを名前で呼ぶところとか、ラナがカーンと最後に別れるところとか。
 ドゥルガ神のお祭りや赤と白のサリーの使い方も。
 そして、スクリーンで観ると、これは紛れもなくコルカタの「街もの」映画であって、インドはどちらかというと南のほうが好きなんだけど、コルカタに行ってみたいなあと思う。ちなみに、デリーの「街もの」映画は『Delhi 6』、ムンバイの「街もの」映画はたくさんあるけど、個人的には『Life in a Metro』と『The Lunchbox(巡りあわせのお弁当)』だと思う。
 パンフレットによると、ハリウッドによるリメイクが決まっているらしいのだが、舞台がコルカタでなくなり、主演がヴィディヤでなくなったら、全く違う映画になってしまうのではないだろうか。別にいいんですけどね。それより、これもパンフレットにあった「『容疑者Xの献身』のインドリメイク」のほうが気になる。インドのリメイクはぜったい!元のより面白い(断言)から。
 この映画は二度目は見方が変わってしまうので(一度目は何気なく見ていたところが泣けたり)、今回初めて劇場で見た方には、是非とも再度みていただければと思う。札幌は5月8日まで公開です。たぶん、あと1回は行くと思う。ゴールデンウィークだし。
 ここしばらくカンボジアものにかかりきりだったのだが、やっぱりインドもいいわあ。前世のどこかでインド人だったのかもという気がする。
【追記】
 結局、3回観に行きました。3回目の感想はこちらに。

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『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』を札幌で観る

 香港の雨傘革命が1か月を経過したことなど、いろいろ書きたいことはあるのだが、久々にインド映画の話を。
 『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』が札幌で公開され、最終日(最終回)に何とか走って行ったのであった。けっこうお客様が入っていてよかったよかった。隣の方はごうごう泣いてらした。

 日本版予告編。
 

 この予告編はちょっと違うような気もする。 
 主人公の純粋な心が周囲の人を…というより、ジルミルの純粋な心が…という気がするのだが。バルフィは捨てられるのを恐れていて友人を試すというくだりもあるし。
 心が純粋な主人公をランビールが好演というのなら『Ajab Prem Ki Ghazab Kahani』の方がいいと思う。またカトリーナが可愛いんだ。
 実は、これ、以前DVDで見て、あまり印象がよくなかったのである。マイオールタイムベストである『Life in the Metro』のアヌラグ・バス監督なんだけど。
 今回日本語字幕で見て、印象は変わったのだが、印象がよくなかった理由もわかった。
 ひとつは、前半のランビール・カプールがなんだかジーン・ケリーみたいなのである。ジーン・ケリーは苦手なのだ。好きなのはフレッド・アステアであって、ジーン・ケリーは上手いところを見せたがっている感がある。「ランビール、あんたが上手いのはわかってる、わかってるから!」という感じ。
 もうひとつは、時間が行ったり来たりして、ストーリーが込み入っているので、かなり字幕に頼らなければならなかったこと。おそらく、DVDで見たときは、前半のジーン・ケリーぶりと見たことがあるネタが続出するので(なにせ冒頭から『プロジェクトA』の自転車のアレだ)あんまり熱心に見ていなかったのだろうと思う。
 歌詞もストーリーに密着しているので字幕があったほうがいいし。
 それから、シュルティ、美人だけど(南インドのスターなのね)その不幸そうな八の字眉でずるずるくっつき続けるのはいかがなものか、というのもあった。
 後半はよかったと思う。これとか。

 それにしても、プリヤンカ様が上手かった。
 プリヤンカ様ことプリヤンカ・チョープラーは元ミス・ワールドなのだが、同じミスコンテスト出身のアイシェと比べるとちょっと野太い感じで、プリヤンカ様の方が好きなのであるが、けっこう作品は見ていると思うんだけど(『Fashion』がいいと思う)、それにしても別人である。この豪華なアイテムガールっぷりったら。
 ランビールも、前半は「どっちかというと彼女より自分が好きなんじゃないの」という風だったのが、ジルミルと一緒になってからのほうが断然いい。そこまで考えてやっていたのなら、すごいと思う。いやランビールも上手いんだけど。
 音楽はプリータム。要所要所でバンドが現れるのが『Life in the Metro』と同じで出てくるたびに笑ってしまった。監督、これが好きなのね。音楽は違う感じなのだが、ギターはプリータムだったのかなあ(よく見えなかった)。全編音楽劇のような雰囲気もある。音楽まとめがこちらに。
 ダージリンってきれいなところだなあ。お茶畑もあるし、行ってみたいな(牛が茶畑でもぐもぐしていたのが個人的にツボ)。田舎もよかった。
 あと、隠れた見所は「老けメイク」だと思います。

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日本で公開『Chennai Express』(2013)

 こちらで教えていただいたのだが、10月26〜30日に東京のヒューマントラストシネマ渋谷で公開されるとのこと。IFFJの一環なのかな、いいなー東京。全国公開しないかな。
 これは、以前ANAの機内映画で日本語字幕で見た。ANAは必ずインド映画が日本語字幕で見られるのはとても嬉しいのだが、一律2時間にカットされているのよね(パーソナルテレビなんだからノーカットでいいのに…)。それで、重慶マンションでDVDを買ったのだった。そういえば、感想を書いていなかった。

 予告編。

 シャールクはムンバイでお祖父さんのお菓子屋で働いている。英語字幕だと「sweets worker(ヒンディー語だとミターイ・ワーラー?)」だというセリフが繰り返し出てくるので、あまり強くないとか格が上ではないというニュアンスがあるのかも。シャールクは友だちとゴアに行きたいと思っているのだが、このお祖父さんが100歳の誕生日に死んでしまい、遺言で遺灰をゴアの反対側にある川に流しにいくことになる。しかし、シャールクはちゃらんぽらんな奴でゴアはその川に繋がっているのでゴアで流しちゃえとチェンナイ経由でゴアに行くべくチェンナイエクスプレスに乗り、そこで汽車に走って追いつこうとしているディーピカちゃんとその連れを引っ張り上げる。実は、ディーピカちゃんはタミルの出身で、従兄弟と結婚させられそうなのを逃げ出してきたのだが、シャールクは追っ手共々ディーピカちゃんを引っ張り上げてしまったのだった。それがもとで、シャールクもディーピカちゃんの村にいくはめになり、ディーピカちゃんの結婚を阻止するために恋人の振りをさせられることに。しかし、ディーピカちゃんのお父さんも従兄弟も手下も荒っぽいというか地元の暴力組織っぽいというか(南の村ってそういうイメージなんだろか)。シャールクは逃げて親切なお巡りさんにかくまわれて隠れた先がスリランカ行きの密航船だったとか、いろいろなことがあり、やっとのことでディーピカちゃんを連れて逃げ出すのだがしかし…という話である。

 こちらの歌は、英語字幕では「北極から南極」となっていたけど「カシミールからカーニャクマリ」というタイトルの歌。インドの北から南までということだわね。

 バックがお茶畑でお茶摘みの人々が踊っている。
 南っぽいというのはわざとで、なにせエンドタイトルがこれで大フィーチャリング・ラジニカントだし、『ムトゥ』の「丸められたラブレターが回り回って大騒ぎ」というネタが使われていたりして、タミル映画を明らかに意識している。

 ディーピカちゃんの村は怖いが、逃げた先の村はいい村だ。南の方は、暴力的だというのと、いいところだというのと両方のイメージなのかとも思う。

 南を舞台にしたヒンディー映画は色がきれいだなあ。
 シャールクの振付が90年代っぽい。
 90年代っぽいというのも明らかにわざとで、冒頭の汽車のシーンはDDLJ(『Dilwale Dulhania Le Jayenge』)そっくりそのまんまで、引き続きヒンディー語が分からない手下の前で映画の歌を替え歌にしてディーピカちゃんと意思疎通を図るところでは、歌もDDLJだったり。最近の歌も出てくるけど。
 替え歌のネタは後でも出てくるし、90年代は劇中に映画の歌が出てくるのがけっこうあったと聞いているので、これも意識してやっているのかもしれない。
 出だしの印象もあって見ていると思い出すのはDDLJで、どちらの映画でもシャールクはちゃらんぽらんなのだが、DDLJはカージョルの父アムリシュ・プーリ(世界一怖い顔の俳優と言っても過言ではない。でも好き)からカージョルを得るために途中からぐんと成長するけど、この映画では成長の過程がちょっと見えづらい。実はDDLJを見直したのだが、この映画、DDLJのリメイクではないかと思うぐらい構造が似ている。
 DDLJは20年前の映画で、何が変わったといって、90年代のヒンディー映画は歌のシーンは決まってヨーロッパだったけど、この映画は南インドがフィーチャーされていること。むかしは、ヒンディー映画はヒンディー映画、タミル映画はタミル映画で分かれていたけど、インドでの国の内外の見方が変わったということなのだろうか。
  「この50年…」「50?俺がそんな年に見えるわけ?」「あらそれ以上なの?」というようなやりとりがあったけど、シャールクって四捨五入すると50歳で、ディーピカちゃんとは年が倍近く違うと『Om Shanti Om』のインタビューで言っていた気がする。20年以上スターを続けていて同じような役柄をやっちゃうシャールクはすごいなあ。

 日本全国で公開してくださると、とても嬉しいのだが。

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豪華娯楽大作『Goliyon Ki Raasleela Ram-leela』(2013)

 これも日本公開してほしい。
 「ロミオとジュリエット」の翻案なのだが、インドの翻案ものはオリジナルよりおもしろいと相場が決まっている。絢爛豪華なインド映画である…と思ったら、監督は『Devdas』の人だった。
 主役はジュリエットがディーピカちゃんでロミオがランヴィール・シン。

 予告編。

 舞台はインド北部の架空の街。ふたつの家が対立している。ランヴィールは明るい人で対立は望んでいないのだが、ディーピカちゃんの家の家長であるお母さんが強烈な人で。2人は恋に落ちるのであるが、ランヴィールのお兄さん(見たことあると思ったら大復讐映画『Rakht Charitra』の極悪キャラであるレディー・ブッカーを演じたアビマンユ・シンだ)がディーピカちゃんの兄に殺され、ランヴィールはディーピカちゃんの兄を殺す。それでも2人は駆け落ちするのだが、ディーピカちゃんは連れ戻され、お母さんの代理で一族を仕切ることになり、家長代行として敵の家の家長となったランヴィールと対面するのであった。

 何が豪華といって、豪華歌舞音曲シーンがふんだんにある。
 2014年フィルムフェアアワード振付賞。

 こちらは、文字通りご婦人が倒れる。
 『Lootera』じゃランヴィール・シンがこんな人だとは思ってなかった。

 超豪華アイテムガール、プリヤンカ・チョープラー様。

 ストーリーは、まあ「ロミオとジュリエット」なので展開は予測できるのだが、こちらのほうが絶対面白いと思う。
 大きいスクリーンで見たいなあ。
 関係者の皆さま、これも日本公開いかがでしょうか。

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最も日本公開してほしいインド映画は『Life in a Metro』(2007)である

 札幌では『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』がたぶん今週いっぱい、『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』が1日1回で続映中。10月には『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』が公開される。シアターキノさん、いつもありがとうございます。

 今年もインド映画が札幌ですら5本、東京ではもっと公開されていて(『Dabangg(ダバング大胆不敵)』は札幌にとうとう来ないのか…)、おそらく、次に何を公開するか、ということになっているのではないかと思う。
 ヒットしている状況を考えると、どちらかというと、ばりばりのマサラ映画よりも、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』や『English Vinglish(マダム・イン・ニューヨーク)』のような、文化を越えて心温まる路線のほうがニーズがありそうな気がする。
 そこで、今、心の底からお薦めしたいのが、

 『Life in a Metro』(2007)。

 2009年に一度こちらで記事を書いているのだが、この機会に改めてご推薦。

 この映画、監督もキャストもいいんです。

 監督が『Barfi ! (バルフィ!人生に唄えば)』のアヌラーグ・バス。
 主要キャストは、シェルパ・シェッティー(『Om Shanti Om』の「Deewangi Deewangi」のピンクのサリーの美女)、嫌な役をやらせたら右に出る者なし(でも嫌いじゃない)『ABCD』 出演のケイケイ・メノン、『3 idiots(きっと、うまくいく)』のラジュー役シャルマン・ジョシー、『Queen』の主演カングナ・ラーナウト、インド映画史上最大のヒット作(知り合いのインド人によると「見たことのないインド人はいない」そうだ)『Sholey』筆頭主演のダルメンドラ(サニー・デオルとボビー・デオルのお父さんでもある)、『Mr. and Mrs. Iyer』ほか出演作多数の演技派コンコナ・センシャルマー、そして、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』主演のうちのイルファン・カーン

 予告編。

 6組のカップルの群像劇。舞台はムンバイ。
 シェルパ・シェッティーとケイケイ・メノンは表面上は理想の夫婦を演じているがうまくいっていない。ケイケイ・メノンはカングナと不倫中。シャルマン・ジョシーはケイケイ・メノンの部下で、叔父から借りているマンションを上司の情事に貸し出して便宜をはかり昇進するのだが実はカングナが好き。カングナはコンコナ(シェルパ・シェッティーの妹)のルームメイト、コンコナはネットのお見合いサイトで知り合ったイルファンと最悪の出会いをするのだが一緒に働くことになり、ダルメンドラは昔の恋人であるナフィーサ・アリ(シェルパ・シェッティーの踊りの師匠)ともう一度やり直そうとしている。そして、シェルパ・シェッティーは演劇青年シャイニー・アフージャと恋に落ちる。
 すなわち、シェルパ・シェッティーを中心に、夫婦、不倫、若者、あまり若くない人、若くなくなった人、片思い、婚活などなど、いろいろな愛の形が描かれているのである。
 たとえば、『The Lunchbox(めぐり逢わせのお弁当)』でムンバイの普通の生活に興味を持った方には、また別の面からムンバイの普通の人々の生活が見られるし、インドだけではない、どこの国にもあるようないろいろな愛の形が描かれているという点では普遍性もあるので、面白く見てもらえると思う。監督がアヌラーグ・バスなので、描き方が暖かい。

 音楽は、パクリ!と言われることもあるけどインドで賞を獲りまくっているプリータム。この映画は、ダンスシーンはないのだが、要所要所でどこからともなくバンドが現れて歌いストーリーを進めるというユニークな音楽の使い方をしている。

 ギターを弾いている太め長髪髭面眼鏡がプリータム本人。
 この映画は音楽もほんとによくて、サントラを買いました。

 おそらく中心になるのは、シェルパ・シェッティーとシャイニー・アフージャのパートだと思うのだが、実はシャイニー・アフージャが苦手で(この人は後に事件を起こして映画界から消えたのであるが)このカップルにはあまり感情移入できず。しかし、他のパートはいいのである。もう後悔したくないダルメンドラたちは結婚していないので世間の風当たりが強く、カングナとシャルマン・ジョシーには何とか幸せになってほしいと思い、ケイケイ・メノンそこで泣くか!しかしシェルパ・シェッティーはどうして対応がそうなるか、などと思う。
 そして、なんといってもコンコナとイルファンのパートが最高。

 これはUTVの公式動画で、なぜか(たぶん『The Lunchbox』がらみだと思う)公開後7年経った今年に入ってから続々と公式動画がアップされているのであるが、UTVはこのシーンのことを「Funny clip」と言っている。
 でも、ぜんぜんFunnyではありません。このシーンと直前のお買い物のシーンは大好きなのだが、終盤イルファンが白馬にうちまたがってムンバイの街を爆走しムンバイ駅に乱入するシークエンスは愛しているといっても過言ではない。
 イルファンとコンコナはこの役でフィルムフェアアワードを受賞しました。
 イルファン、こういう役も似合うのに、なかなかないのよね。

 実は、この映画は個人的インド映画オールタイムベストなんである。
 が、それを抜きにしても、とてもとてもよい映画なので、どのインド映画を公開しようかとお考え中の関係者の皆さんには、是非とも!日本公開を検討していただきたいと心からお願い申し上げる次第です。

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